第810話

ヨエク兵1人に対して木偶人形が2体ほどで当たる。


1体でも倒せなかったのに、数が増えましたがどうしますかね?


基本ヨエクに味方しているやつには容赦しないからな。

魔力を使わなくてもこの程度の事は出来るぞ。


「ぐわぁっ!な、なんて硬さだ!こんなモンスターを呼ぶなんて、あいつは魔王か!」


いえいえ、こんな善良な冒険者を捕まえようとしておいて反撃されたら魔王呼ばわりなんてどうかと思いますよ。


「ひいっ!な、なんなんだコイツは!」


あ、それはただ怖がらせるために作った木偶人形だから、特に攻撃してきませんよ。

そんな武器を手放して命乞いしなくても何もしませんから。


あ、奥の方で抱きつき型木偶人形が爆発した。


「うわっ!こ、こいつ爆発したぞ!だ、大丈夫か、おい!」


大丈夫じゃないと思いますよ。


相手の動きを止めるために、爆発での殺傷能力よりも爆煙で相手の視界を防ぐ事を目的にしてるけど、それでも当たりどころが悪かったら動けなくなるだろうな。

あ、当たりどころが良かったらか。


さて追加で何体か出そ‥


「‥‥‥ふん‥」


ずっと動かなかったダリックが突然動いた。


いや、正確にはダリックの左腕だけが動いた。


失っているはずの左腕に、また紫色の巨大な腕が現れる。


そして紫腕は拳を握りしめたかと思うと、辺りの木偶人形に拳を振い始めた。


紫腕は自由自在に動き、木偶人形を弾き飛ばしていく。


正面から殴られた木偶人形は、飛ばされて多少壊れはしたが起き上がり動こうとしている。

しかし真上から潰すように殴られた木偶人形はその動きを止めている。


「‥‥‥ふん‥‥この程度で俺をどうにかできると思ったか‥‥」


「いや、あんたを倒せるとは思っていなかったが‥やはりヨエクの仲間だな、自分の部下ごと木偶人形を攻撃するとは思わなかったぞ。」


そう、ダリックは戦っているヨエク兵ごと木偶人形を攻撃した。


殴られただけのヨエク兵は吹っ飛ばされて動けなくなっているが、上から潰されたヨエク兵はその身を地面に貼り付けて息絶えている。


「‥‥敵を倒すために犠牲になったのだ‥ヨエク王のために死ねたのだ、本望だろう‥‥それともこいつらの命を救いたかったのか?‥‥」


「いや、まったく。ヨエクの味方をしてるだけで助ける対象には入らない。ただ酷い事するなと思っただけだ。」


「‥‥‥お前‥‥その口ぶりからすると‥‥まさかヨエク王に弓引こうとしているのか?‥‥」


「だったらどうする?それに今お前らと戦ってる時点でそうなるだろ?その紫のやつは頭までおかしくするのか?」


「‥‥‥‥貴様‥‥ゆるさんぞ‥」


紫腕が先程よりも勢いを増して周りを攻撃し出した。


木偶人形もヨエク兵もお構いなしだな。


俺を狙ってるつもりだろうけど、狙いが曖昧だ。


あの紫色の腕が勝手に動いているような印象を受ける。


「‥‥しね‥」


俺は『スペース』から抱きつき型木偶人形を取り出して後退する。


ダリックの攻撃は木偶人形に当たり、爆発して辺りを爆煙で包み込む。


「‥‥‥にがさんぞ‥‥」


逃げるわけないだろうが。


俺は『スペース』から魔道具を取り出す。


本当はスキル【創造士】を使って作った物を使いたかったけどな。


「‥‥どこだ‥‥」


「必殺!ドリルパーンチ!」


爆煙をかき分けて、ゴーレムの必殺パンチがダリックを襲う。


「‥ぐぬっ‥」


紫腕がゴーレムの攻撃を防ぐ。


しかしこのゴーレムパンチはここからなのだよ。


ダリックが防いだゴーレムパンチの先端は円錐になっており、それが高速回転している。


たとえ受け止めたとしてもその腕をぐりぐり攻撃する。


「‥‥くっ‥‥なんだそれは?‥‥またおかしな物を呼びよって‥‥」


ダリックは腕を振り払い、攻撃を避ける。


爆煙が晴れ、俺が乗るゴーレムが顕になる。


「ふん。俺の開発した魔道具が木偶人形だけだと思うなよ。今度はこの量産型ゴーレムで相手してやるぞ!」







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