第794話
「詳しく説明せよ。」
「は、はいっ!私がヨエク王の命を受け、鉱山の中に入りました。現在採掘している坑道を掘らせましたが、一向に希少鉱石は出ずに鉄鉱石のみが採掘されました。坑道を変更して別の場所を確認しましたが、同じ結果でした!」
ダリックは下を向いたまま、一息で言葉を放った。
途中で息を吸えば、その後の言葉が出て来ないと思ったからだ。
「ほう‥‥原因は?」
「ふ、不明です!保管していた希少鉱石も全て空になっておりました!」
「ふふ‥‥ふはははははは!随分と知恵の回る奴が前王についたようだな‥まさかこちらの財源から攻めてくるとは思わなかった‥」
笑い声が聞こえたため、思わず顔を上げるダリック。
ヨエクの感情1つで自分の生死が決まってしまう中、ヨエクが笑った事で思わず顔を上げてしまった。
するとヨエク王がダリックを見て声をかける。
「何がおかしい?」
ダリックの顔は恐怖のあまり口角が上がっていた‥
ヨエクが王座から立ち上がり、ダリックに歩み寄る。
ダリックはすぐに蹲るように頭を下げる。
「ダリック‥だったか?お前は我のため今まで随分と働いてきたようだ‥」
ヨエクが将軍の時に副官になり、かなりの年数が経った。
その自分をヨエクが忘れかけている事に違和感を覚える。
「今回は不問としてやろう。そのかわり鉱石を盗んだ者を見つけろ。」
「は、はいっ!」
ダリックは顔を上げ、ヨエクを見る。
そしてダリックは恐怖のあまり固まってしまう。
「だが、失態は失態だ。盗んだ者を見つけるまで、これは預かっておこう。」
ヨエクはダリックの左腕を掴む。
そしてそのまま腕を捻じ曲げる。
「ぐわぁっ!が!ぎ、ぎゃぁぁぁぁ!」
ダリックの左腕はそのままぶちぶちと不快な音を立ててダリックの身体から外れる‥
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」
「腕くらいで大げさぞ。王の前で不敬ではないか?」
「ぐひぃ、ひぃはぃ‥も、申し訳ご、ご、ございません‥ひぃひぃ‥」
「心配するな‥腕程度なくても問題ない力を与えてやる‥それを使って探し出してこい‥」
ダリックは近寄ってくるヨエクが何かを持っている事に気づいた。
しかしダリックの視線はヨエクの顔から目が離せないでいた。
片目だけが赤く染まっているその眼から‥
「イェルンさん、ここなん?」
アキーエたち一行は一軒の家の前で立ち止まっていた。
「はい、そうです。ここが中立貴族の中でも1番の勢力を持つアザウア伯爵の家になります。」
「伯爵家ねぇ‥」
アキーエの目の前にはこじんまりした一軒家がある。
おそらく部屋数も10部屋ないだろう。
少し裕福な商人が住むくらいの家で、お世辞にも大きな勢力を持つ貴族の家には見えない。
アレカンドロの実家の方が大きいくらいだった。
「アザウア伯爵家の当主は代々倹約家で、家も自分達で管理できる程度の家でいいといった考え方でして。」
「そ、そう。」
アキーエは貴族は見栄を張るものと考えており、お金が多少なくても大きな家に住むと思っていた。
そんな貴族がそれも大きな勢力を持つ伯爵家が、倹約家とはいえこんな家に住むとは思っていなかった。
「イェルンさん。いくら倹約家いうても伯爵や。それに中立いうたら狙われる事も多いんと違う?そんな人が護衛もいないような家に住んでてええの?」
「そうですね。伯爵自身が強いと言う事もありますが、伯爵には手練れの護衛が1人ついていまして。」
なるほど。
自分に自信があり、尚且つ信頼のおける護衛がいるだけって事ね。
それでも中立派で1番の勢力を持ってるって、かなり有能だって事よね‥
そんな人が追い詰められている王様の味方をしてくれるのかしら‥?
そんな事をアキーエが考えていると、家から1人の男が出てきた。
男は足音を立てずにアキーエたちの元に歩いてくる。
「ここはアザウア伯爵家だ。何用か?」
「うわっ!き、貴公はバクスター殿か!す、すまない急に声をかけられて驚いてしまった。私は宰相のイェルンだ。アザウア伯爵と話がしたくてここに来た。取り次いでもらえないか?」
「イェルン宰相でしたか。申し訳ございません。すぐに伯爵に報告いたします。」
バクスターはそう言うと家に戻っていった。
アキーエに対して警戒した視線を向けた後に‥
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