第793話
「それでは行ってまいります。必ずや吉報を持ち帰ります。」
イェルンさんはギルドから出発する前に、王様にそう伝えてこちらに歩いてきた。
「マルコイさん‥マルコイさんがいれば何があっても問題ないと思います。私もアキーエさんたちがいるから無事に役目を終えて戻ってくるつもりです。しかし私は普通の人です。何らかの事故で帰れなくなる事もあるかもしれません。その時は‥王様をよろしくお願いいたします。」
見上げた忠誠心だ。
だがアキーエとキリーエがいるのに、そんな事態がいるとは思えないぞ。
よっぽどイェルンさんがおかしな事しなければだけど。
「2人がついています。何も心配いりません。だから必ず帰ってきてください。」
俺はイェルンさんに握手のために手を差し出す。
「マルコイさん‥」
イェルンさんは涙を浮かべながら俺の手を握る。
それに対して俺は満面の笑みを浮かべる。
かかったな。
『創造:タルタルソース』
俺はスキル【創造士】を使い、手のひらからタルタルソースを作り出す。
タルタルソースは俺とイェルンさんの掌から溢れ出し、イェルンさんの顔にかかる。
「うべべべべぺッ!」
ふはははは。
小さな嫌がらせその1だ。
しかし思ったよりも勢いがあり過ぎた。
まだ掌から出てるから、仕方ないので向きを少し変えて、イェルンさんの袖からタルタルソースが中に入るようにする。
「うびゃびゃびゃびや!」
どうだ?
これが正しいタルタルソースの使い方だ!
「うはははは!すまないイェルンさん!ちょっとスキルが暴発したようだ。余裕で生きて帰って来れるような事を命をかけてみたいな事を言うからこうなったんじゃないかな?」
「あべべぺぺぺ!」
ふむ。
気に入ってくれたようで何よりだ。
「マルコイさん!」
「ど、どうしたミミウ?」
「マルコイさん!食べ物粗末にしたらダメですぅ!」
「あ、はい。すみません‥」
イェルンさんのせいでミミウに怒られた‥
俺とイェルンさんでしっかりと床の掃除を行う。
「なんで私も‥私は被害者のような気がするんですけど‥」
気のせいだ。
あと、ちゃんとイェルンの袖の中から入った物は、イェルンさんが責任持って食べました。
ミミウさんに怒られるから‥
イェルンさんはアキーエたちと共にギルドから出発した。
しっかりと身体を拭いていたが、「うっ‥べとべとする‥」とかいっていとが、まあどんまいだ。
ヨエクが動くよりも先に、イェルンさんが仲間を増やせるのか時間の勝負になりそうだな‥
「くそっ!何でこんな事にっ!」
男は悪態を吐きながら、長い廊下を早歩きで進む。
男の頭の中には、いかに自分が罰を受けずに済むか、いや生きて帰るためにどうすればいいのかだけが渦巻いていた。
朝までは、自分の懐を肥やすための事を考えていた。
どれだけの量ならバレずに自分の懐に入れる事ができるのか?
それで自分の利益がどれくらいになるのか?
そんな事ばかりを考えていた。
その時は口元の緩みが酷く、護衛の者達から怪異な目を向けられていた。
しかし今は頬がこけ、困惑のあまり毟ったせいで髪の毛もろくに残っていない。
まるで一気に数十年歳をとったようだ。
目の前に報告すべきお方がいる大きな扉が見えてきた。
男が近づくと大きな音を立てて扉が開く。
扉の奥には1人のドワーフが座っていた。
自分が仕えてきた男だったが、今は別人のような風貌をしている。
「ダリックよ。何をしている。早く報告をせよ。」
王座に座っているヨエクからおぞましい声が発せられる。
報告にきたダリックは自分の命が、自分が今まで心血を注いで集めてきた財産で買えるかどうか考え始めていた。
「何をしている?」
今度は声と共に圧力がのしかかってきた。
ダリックは押し潰されそうになりながら、這いつくばるようにヨエクの元に進む。
「ヨ、ヨエク王。ほ、報告がございます。」
ダリックはカラカラに渇いた喉に無理やり唾を流し込みながら言葉を続ける。
「こ、鉱山の希少鉱石が何者かに全て運び出されていました!」
「‥‥なに?」
ダリックはヨエク王の顔を見て、自分の命が自分の財産では足りない事を悟った。
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