第781話

「それじゃあ、ヨエク側についていない貴族とはどうやって接触するんですか?イェルンさんが行くんですか?」


イェルンさんは布を被せて縛ってある女神像の足元から中身をどうにか見ようと奮闘している。


うん。

後とは言わず今すぐ話し合いをする必要がありそうだな‥


「イェルン。今はヨエクを倒す事を優先するのだ。全てが終わってから女神像を盛大に奉ろうではないか。」


うんうん。

それを普通に言ってくれたらいいんだけど、イェルンさんの反対側から女神像を覗いているから説得力がありませんけど‥?


「はぁ‥2人とも‥‥‥ん?」


【察知】に反応があった。


真っ直ぐこちらに向かっている。


「キリーエ。ギルドマスターにここにいる事を伝えたか?」


「うん。ギルドマスターには伝えたよ。そやけど、移動するし、こっちから連絡するから向こうからは連絡せんでええって言うたけど?」


ふむ。

しかし反応は真っ直ぐこちらに向かっている。


ギルドマスターがヨエク側についたのかとも思ったが、反応は1人だ。


さすがに1人で突っ込んでくるとは思えないが‥


「みんな、ここに向かってくる人がいる。1人だから敵ではないと思うけど、念のため気を付けてくれ。」


「わかったわ。」

「わかったですぅ。」

「むう!強いといいですなぁ!」

「きる‥」


いや、みんな俺の話聞いてた?

敵じゃないと思うけどって言ったような気がするんだけど‥


キリーエに関しては何も言わずに射撃しやすい場所に移動したみたいだ。

姿は見えないけど‥

すっごい怖いんですけど‥


しばらく待っていると、教会の扉が大きな音をたてて開く。


「すまない!アキーエさんって人いるか!?」


教会に飛び込んで来たのはドワーフではなく、まだ若い人族の男性だった。

腰に剣を下げて、ライトアーマーをつけているから【剣士】持ちの冒険者だろうか?


「なあ!アキーエさんはいるのか!?」


「わたしがアキーエだけど‥」


アキーエがおずおずと前に出る。


「はぁはぁ‥よかった!すまない、力を貸してくれ!冒険者ギルドが狙われてるんだ!」


「どういう事だ?」


俺はその青年に声をかける。


「あんたは?」


「俺はアキーエの仲間でマルコイだ。それよりも冒険者ギルドが狙われているってどういう事だ?」


「それが俺には何で狙われているのかわからないんだけど、ギルドに衛兵が来たかと思ったら突然ギルド内にいる冒険者に宣言したんだ。『今から冒険者ギルドはプリカから消滅する。ヨエク王が冒険者に直接依頼をかけるが、その依頼を受ける者は城に来い。もしギルドに残っているようであればギルドと共に消されると思え。』って。ギルドマスターはすぐに俺に教会に行ってアキーエって人を訪ねろって。その人とその仲間がいれば大丈夫だからって。」


なるほど。

しかしヨエクは思い切った事をするな。


ギルドはもう必要ない、自国の兵だけで事足りるって言いたいんだよな‥


それだけ銃に自信を持ってるわけか‥

それに鉱石をたんまり掘って、希少鉱石で金儲けして強大な軍事国家を作るつもりなんだな‥



ん?



‥‥‥‥まだわからないけど‥


多分‥‥ミミウとノームが鉱山掘り尽くした時点でヨエク詰んでないか‥?


意図的ではなかったけど、ヨエクの要を潰してるよな‥


銃を作るにしろ、冒険者を仲間にするにしろ、必要なのは金だ。


ヨエクは希少鉱石が掘れる鉱山があるから、思い切った行動に出たんじゃないだろうか?


だけど鉱山にはもう希少鉱石は一つも残っていない。


これってしばらく隠れてたら、自滅していくような気がするけど‥


まあそうなると冒険者ギルドとかなくなってしまうから、隠れるわけにはいかないけどね。


「わかった、ありがとう。それじゃあ冒険者ギルドに行くとしよう。」


「ほんとかっ!ありがたい!でもあんたじゃなくてアキーエさんに来てほしいんだが‥」


あ、そうですよね。


「それじゃあ爆殺女神アキーエさんを連れて冒険者ギルドに行くか!」


ヨエクの企みを阻止するためにな。


今はアキーエさんのツッコミを阻止するのに命懸けだがなっ!







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