第780話

「ダリックが鉱山の調査に向かっていたな。ダリックに調査を中止して、そのまま希少鉱石を集めるように伝えろ。冒険者ギルドの依頼がどこから出ているのか知らんが、そんな物が霞む金を用意しろ。そしてギルドマスターには話を聞かねばならんな。その冒険者が誰でどこにいるのか‥多少手荒な真似をしても構わん。もう冒険者ギルドも必要ないだろうからな。」


「はっ!」


「それと‥そこの無能を処刑して捨ててこい。」


「えっ!」


「聞こえなかったか?そこの無能は前王を見つける事が出来なかったのだ。無能は必要ない。」


「‥‥‥‥‥はっ!」


報告に来た兵は顔面蒼白となっていた。


「よ、よくやったと言われたと思いましたが‥」


「よくやったのは、その冒険者だ。お前のような無能ではない。早く連れて行け。」


報告に来た男は部屋に入ってきた兵士に両手を掴まれ立たされる。


「ヨエク王!もう一度機会を下さい!必ずお役にたっぶっ!」


甲高い音が聞こえ、男の頭が破裂した。


ヨエクの手には白銀に光る銃が握られていた。


「よかったな、ミスリルの銃だ。その弾を受けたのだ。無能にとっては過ぎる物だったであろう。」


男の身体はそのまま引き摺られていく。


「前王はまだプリカにいる。おそらく冒険者関係の者が匿っているだろう。見つけた者には、このミスリルの銃を与えるぞ。」


「はっ!」


兵は指示を出すために王座の間から出て行った。



ヨエクは王座に倒れるように座り込む。


「あと少しだ‥もう少しで最強の国が出来上がる‥」


そのヨエクの声は誰にも聞こえず王座の間に消えていった‥













「よしっ!腹も膨らんだけど、今からどうするんですか?」


俺はイェルンさんに問いかける。


「そうですね‥まずはヨエクに賛同していなかった貴族がいくつかあります。そこに声をかけてみましょう。」


イェルンさんは女神像がある方に向いたまま返事をする。


君は人と話す時は、相手の目を見なさいって子供の頃に言われなかったのかね?


そっちに俺はいませんよ?


そこにいるのは黒い布を被せられた女神像があるだけです。


なんで黒い布を被せてるかって?


だってコイツもう遠慮しなくなったんだもん。


俺以外にも人がいるから、あんまり見つからないように光ってたと思ってたのに、みんなでオムライス食べ出したら光る光る‥


オムライスを作ってた時から、微かに光ってるなぁと思っていたんだけど、アキーエに渡して作り終わったつもりでいたら‥‥めっちゃ光りやがった。


まるで待ってたんだけど、何故自分にはないのかと訴えるように。


面倒だったので、オムライスを作って乗せたら、激しく点滅だけしてオムライスが消えなかった。


そこでトマトソースではなく、タルタルソースをご飯に絡めて、仕上げに卵の上にタルタルソースをかけてやった。


オムライスならぬオムタルタルライスだな。


オムタルタルライスは女神像の皿に乗せた瞬間に消えた。


そしてしばらく待つと‥‥


七色に光りやがった。


イェルンさんが涙を流しながら、ちょっとこの人おかしいんじゃないのかと思うほどの祈りを捧げだした。


そんな事をするから、駄女神が調子にのるんです。


俺は『スペース』から真っ黒い布を取り出す。


これは俺が変装用の魔道具で使用していた布で、真っ黒で光を通しにくい布だ。


俺はその布を女神像の頭から被せてる光が漏れないように足元を紐でくくる。


「なっ!マルコイさん!女神様に何て事をするんですか!」


何するんですかって‥

ねぇ。

本音としてはこのまま人目のつかないところに押し込んでおきたい気分だが、イェルンさんが邪魔するだろうな‥


「イェルンさん!確かに女神様の事は大事だとは思います。しかし目的を見失ってませんか!?今この戦いに負けてしまったら、女神様にタルタルソースをお供えする事も、光る女神像を見る事も出来なくなるんですよ!」


するとイェルンさんは驚いた表情を浮かべる‥


「た、確かに‥」


いや、わかってましたよね?

何を今気づきましたみたいな顔してるの?


やっぱり、このおっさんは一度膝を合わせて話し合った方がいいような気がする‥









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