第779話

キリーエにポーションをもらい、がぶ飲みしてからミミウの料理を作った。


ミミウさんのお腹はどうにか落ち着いたらしい。


まだお腹いっぱいじゃないのが摩訶不思議でしょうがないのだが、まあブラックホールと言う事なんだろうな‥


アキーエにももちろんオムライスを作ってやった。


上に書いたのは『愛してる』


「マルコイ〜?何この呪いの文字みたいなのは?わたしのは皆んなみたいに文字を書いてくれないの?」


腕が上手く動かずに呪いの言葉になっていたらしい‥


「ちょっと待ってやアキーエちゃん。マルコイさんも疲労してる腕で精一杯書いたんとちゃう?うちが読んだるわ。」


おお‥


ありがたいキリーエさん。


「えっと‥最初の文字からかなりぐにゃぐにゃしとるね‥‥‥‥‥わかった!「死んでる」や!」


「えっ!そ、そうなの?」


「もしかしてアキーエちゃんの爆発で誰か死んだんとちゃう?」


「そ、そんな事ないわよ!ちゃんと足元に当てたし‥でもかなり空を飛んでたから、もしかしたら‥」


「違う違う。」


なんでそうなるの。


「え?そうなの?それじゃあ何て書いてあるの?」


うっ‥


面と向かって聞かれると恥ずかしい‥


「‥‥‥‥‥暴れてる‥暴れてるって書いたんだ。」


「そ、それは確かね‥少し暴れ過ぎたかしら?」


「いや、そんな事ないよ。よく暴れてくれたから、事が進むぞって事だ!」


「そうなの?それならよかった!ストレスも解消できたし、一石二鳥ね!それにまだまだ暴れ足りないから、また言ってね!」


ど、どんまい俺とヨエク‥








プリカにある王座の間に1人の男が駆け込んできた。


「ヨエク様!ご報告です!」


王座に座るドワーフが顔を上げる。


その顔は頬が痩けており、顔色も悪かった。


頬が痩けたことで血走った目が大きく見え、よりその容姿を異様な物にしていた。


クーデターを起こし、新たに王となったヨエクの姿は変わり果てたものになっていた‥


「なんだ?」


「はっ!冒険者ギルドを見張っていた者からの報告です。冒険者ギルドより、プリカに登録している冒険者に依頼が出されたました。」


「ほう?どのような依頼だ?つまらぬ物ではあるまい?」


「は、はい‥‥どうやら依頼はヨエク様を倒すのに力を貸せといった物のようです。」


「ははっ!冒険者如きが!しかしおかしいな‥?冒険者は前王の行方がわからない間は動かないと思っておったが‥‥‥まさかっ!?前王の行方がわかったのか?」


「おそらく。先日プリカに入った冒険者の行方がわからなくなっております。それと同時に冒険者ギルドの付近で衛兵が多数やられました。その冒険者が絡んでいると思われますが、衛兵の回復を待って確認する予定です。その衛兵がやられた後にギルドから依頼が発信されましたので、その冒険者が前王を確保してギルドに報告したためと思われます。」


「そうか‥‥‥‥」


「申し訳ございません‥」


こんな報告をする羽目になった兵士は項垂れていた。


ヨエクが以前と様子が変わり、些細なことで罰を与えられたりするようになった。

今回の前王を捉え損なった事に関してはどんな罰が与えられるのか想像したくなかった。


「ふは‥」


奇怪な声が聞こえたため、兵士は顔を上げる。


その目にはヨエク王の醜悪過ぎる顔が映った‥


トールルズの将軍として、若い頃は数多くの武勲を上げ尊敬する将軍だった。


いつの頃からか、様子が変わり些細な事で逆鱗に触れてしまう事が多くなった。


しかしそれでも人であった。


こんな化け物ではなかったはずだ‥


「ふはっ!ふはははははハハハッ!何を謝る必要がある!今まで隠れていた物が見える所に現れたのだ!好機ではないか!」


ヨエクは王座の間に響く大きな声を張り上げた。


「よくやったぞ!おい!他の兵を呼べ!」


ヨエクが声に反応して、別の兵が慌ててヨエクの前に来る。


「はっ!如何いたしましょう!」


ヨエクの顔が、更に醜悪な物となった‥











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