第763話
キリーエに聞いたが、ヨエクが管理する地下鉱山はプリカの街の北端にあるそうだ。
俺たちは一塊になってその場所を目指す。
夜が更けている事と外出禁止令でも出ているのか人気は少なかった。
時々巡視している衛兵がいたが、事前に察知してやり過ごしていく。
しかしヨエクの管理する場所あたりから警備が厳しくなり、キリーエ以外は見つからずに進むことが困難になった。
「マルコイどうするの?」
「うちだけだったら中に入れるんやけど‥いっそのこと、うちだけ入ってモンスターと戦ってこよか?」
キリーエが勇ましいことを言っているが、銃に頬擦りしながら言うのはやめてほしい。
ただのシリアルキラーです。
「普通に行くと見つかるだろうな。でも大丈夫。こんな事もあろうかと準備しておいたんだ。」
俺は人数分の変装魔道具を『スペース』から取り出す。
「俺が戦場に行った時に着ていた変装用の魔道具だ。これを着れば闇夜に紛れるの事ができるぞ。」
アキーエがすごく嫌そうな顔をしている‥
な、何故だ?
「どうしてもつけないとダメ?」
「え?だってこれがあれば見つからずに侵入する事が出来るぞ?」
「それはわかってるけど‥わたし‥ワカメつけたくないんだけど‥」
「いや、ワカメはついてない!あれは追加オプションだ!」
「ほんとに?でも磯臭いのもちょっと‥」
「それも追加的なもので‥」
「はいはい。ほんならうちが黒い布を待ってるから、マルコイさんが宙に階段と道を作って、その上に黒い布を敷いて進めばいいんちゃう?この暗さやったら見られても気づかないんやない?」
確かにな‥
確かなそうなのだが‥
俺の隠密キットが磯臭いって理由で却下されるとは‥
早いとこアキーエに手伝ってもらって洗う事にしよう‥
俺たちは【時空魔法】で作った道を進み、地下鉱山の真上に着いた。
途中何度か空を見上げていた衛兵がいたが、特に気付かれる事なく着くことができた。
鉱山がある場所は建物を模していた。
その建物の中に入るところには衛兵が数人立っていたが、鉱山に入るための入り口には誰も立っていない。
昼間は立っているのかもしれないが、夜中に入る人がいないから見張っていないのだろう。
そして都合よく、鉱山の入り口には屋根がついておらず、このまま下に降りれば中に入れそうだ。
周りに人がいない事を確認して下に降り立つ。
「よし。このまま王様の元に向かうぞ。」
全員が頷く。
音を立てずに進む。
王様がどこにいるのか聞いてはいないが、【察知】があるから近づけば反応するだろう。
鉱山の中に入る。
中は少しひんやりとしている。
そこに漂っているひんやりとした空気と共に獣臭がしている。
中にいるモンスターの臭いか‥
入り口でわかるって事は、中に結構な数のモンスターがいるのかもしれない。
「みんな気を抜くな。モンスターの気配がするぞ。しかも予想していたよりも数が多そうだ。」
「わかったわ。」
「アレカンドロと俺が先頭に立つ。リルとキリーエはフォローを頼む。アキーエは近づいて来たやつを迎撃してくれ。くれぐれも火魔法を使っちゃダメだからな。全員がアフロになったら、それを元に戻すのに多量の魔力が必要になるからな。」
「わ、わかったわ。」
俺たちはモンスターとアキーエの魔法に警戒しながら進んでいく。
しばらく進んでいると【察知】が反応する。
「この先にモンスターがいるみたいだ。みんな戦闘になるぞ。視界に入り次第一掃する。近距離戦でかたをつけるぞ。くれぐれも火属性の広域型殲滅魔法なんて使うなよ。」
「わ、わかったわ‥しつこいわね‥」
しつこいくらい言わないと、すぐ魔法ぶっ放すからな‥
狭い道を進み、角を曲がるとモンスターの姿が見えてきた。
どうやら狼系のモンスターのようだな。
嗅覚が鋭い事もあり、向こうもこちらに気づいているようだ。
あまり音を立てずに倒したいところだが‥
倒すべきモンスターを視界に収めると、そのモンスターの頭が何の拍子もなく突然破裂した‥
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