第762話

夜の帳が下りる‥


見張りに出ていたキリーエが戻ってきた。


「今日のところは鉱山は調べんかったけど、明日明後日には鉱山を調べると思うわ。せやから鉱山に行くなら今日やね。」


そうか。

もともと今日侵入するつもりだったしな。


ヨエクの持つ鉱山に侵入して、王様を救出してヨエクをぶっ飛ばす。

計画に何ら変わりはない。


「ありがとうキリーエ助かった。」


「ええんよ。うちは戦闘では役に立たへんからね。これくらいならうちでも出来るさかい。」


「そんな事はないぞ。キリーエがフォローしてくれるから俺たちは動けるんだから。それにほら。」


俺はオリハルコンの回転式拳銃をキリーエに渡す。


「スキルレベルが上がって金属を扱えるようになったんだ。それでキリーエが使えるような武器を作ってみた。名付けて『連続射撃ボカン君』だ。魔道具にはなるが、魔力回路を使っているのは吸音と衝撃吸収だ。」


「うわぁ‥きれいや‥‥ありがとうマルコイさん!」


よかった。

喜んでくれたみたいだ。


「威力を上げる魔力回路とかはついとらへんの?マルコイさんにしては珍しいんやね。」


「そうだな。はっきり言うと、威力を上げる魔力回路をつけると、弾が耐えきれないんだ。」


俺はミスリルの弾を出してキリーエに渡す。


「え?あっ!これってミスリルなん?」


「ああ、そうだ。ミスリルじゃないと、このボカン君の威力に耐えきれなかったんだ。」


「そうなんや‥ミスリルじゃないと撃てない銃なんて、なんや凄すぎるわ。このサイズやと1発撃つごとに金貨10枚分くらいあるんやない?お金なかったら直ぐに使えなくなりそうやね。」


あ、そりゃそうだ。

でもキリーエなら大丈夫だろ。


「これでうちも戦えるんやね‥ありがとうマルコイさん。この『プロミネンス』を使って、うちも皆んなと一緒に戦うわ!」


「『プロミネンス』?」


「あ、ごめんな。うちの武器やさかい名前つけさせてもろたわ。ほんまにマルコイさんありがとう!」


いや、喜んでくれて嬉しいんだけど、俺がつけた『連続射撃ボカン君』って名前はどこにいったんだろう‥


まったくスルーされたような気がする‥


ぐすっ‥





「そろそろ行きますか?」


イェルンさんが声をかけてきた。


「もういいんですか‥?」


「はい。あとは王を助けた後に。」


そうか‥


この人、女神像が光った後ずっと女神像に祈りを捧げてたんだよな‥


俺が後ろでスキル使いまくって魔道具作ってたのにまったく興味を示す事なく祈ってたもんな。


まあ見てたら見てたで、リアクションが大きくてうるさかったも思うからよかったのかもしれない。


俺のスキルのインパクトよりも女神像が光った事の方がインパクトが大きかったという事だろう‥


あれ‥?


なんだろう‥


駄女神に負けたような気がして不愉快なんだが‥


「女神様と、この女神様が好まれる神聖なタルタルを奉ろうと思います。」


これでタルタル教なんてものがあるなんて言ったらとんでもない事になりそうだから黙っておこう。


「そう言えばイェルン様。噂で聞いたのですが、他国ではタルタル教なるものがあるそうです。なんでもタルタルを世に使わせた神様がいらっしゃるようで、その神を奉る教団のようです。」


なに余計な言ってんのクィリーノさん!


ほら、イェルンさんが『ほほう』みたいな顔してるじゃないか!


「ありがとうクィリーノ。その件も合わせて王に報告しなくてはいけませんね。」


もう知らない‥


だんだんとタルタル教が侵食していってる‥


フーラさんが知ったら、絶対司祭を派遣に決まっている。


俺のできる事は、少しでもそれを遅くするために口を噤むことくらいだろう‥


「そんな事はどうでもいいんですよ!早く王様を助けに行きますよ!」


「はい!どうでもよくはないですが、全ては王を救出してからになりますね。急ぎましょう!」


何か色々と納得いかないけど、俺たちは王様の救出に歩を進めるのだった。









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