第761話
俺の手には銀色に輝く銃が握られている。
おそらくこの銃なら木偶爆弾と同じ、圧縮した火薬を使った弾も発射する事が出来るだろう。
俺は『スペース』から木偶爆弾を取り出して分解する。
そして取り出した圧縮火薬と鉄を使い、回転式拳銃の弾を作り出す。
回転式拳銃に弾を込めて、天井に狙いを定める。
「ねえマルコイ。ちょっと聞きたいんだけど、そんな恐ろしい物を室内で使ったりしないわよね?」
「えっ?」
「それに木偶爆弾の火薬を使ってるんだったら、相当大きな音が出ると思うんだけど‥?」
「んがっ?」
そ、そうだった。
早く試したいので、すぐにでも使おうと思ったが、よく考えたら今は潜伏中だった‥
俺は回転式拳銃に、音を吸収する魔力回路を取り付ける。
よし、これで完璧だ。
天井に狙いを‥
おっと間違えた。
試したい欲望を自制しなければ。
決してアキーエさんの目が怖かったからじゃないんだからねっ!
教会の扉を少し開けて周りを確認する。
教会が郊外にあり、人通りが少ない事もあって人の気配はなかった。
まあスキルで調べて誰もいないの知ってたんだけどね。
それでも大きな音がすれば人が集まってくるだろうが、魔力回路をつけて魔道具化した回転式拳銃であれば音が出る事はない。
銃を空に向け、撃鉄を起こす。
さてどんな具合に仕上がったかな?
引鉄を引く。
銃身から飛び出す炎。
それと‥‥‥
何故か弾倉からも炎を吐き出していた‥
「うあっちい!」
炎は弾倉から銃身に向けて出ていたので、直接手を焼く事はなかったが、熱波が来て思わず銃を落としそうになった。
音がないのでわからないが、多分これ爆発してるよな‥
爆発は3度の飯より好きだが、意図しない爆発はお腹を壊しそうだ。
炎が治まったので弾倉を外してみる。
すると弾と思われるものが溶解して銃身や弾倉にこびりついていた。
これって‥
そうか。
多分鉄の弾が圧縮火薬の火力に耐えきれなかったんじゃないだろうか‥
そうだよなぁ。
確かに威力を上げるために、火薬の量を10倍以上にしたけどそれを受け止める弾の強化はしてなかった。
しかしどうする‥?
単純に弾を強化すればいいんだけど、弾1発1発に魔力回路つけて強化するのも馬鹿げてる。
何かいい方法がないものだろうか‥?
あっ‥
そうか。
鉄が耐えれないなら、別の物に変えたらいい。
さすがに弾をオリハルコンにするのは憚られたので、この回転式拳銃に使用する弾はミスリルを使う事にする。
オリハルコン程ではないが、ミスリルの融点もかなり高い。
耐久性も高く、鉄に耐えられなかった圧縮火薬にも耐えてくれるはずだ。
【スードゥクリエイター】でミスリルの形状を変化させる。
そして弾のケースボディに圧縮火薬を詰める。
これでミスリルが耐えれなかったら、いよいよ魔力回路付きの弾丸にするかオリハルコンを使うしかなくなるな。
頼むから耐えてくれよ‥
俺は弾を弾倉に入れて上空に構える。
引鉄を引く。
音はしないが、ものすごい衝撃が身体を襲う。
あまりの反動に腕が持っていかれる。
こ、これは反動をなくす魔力回路も必要だな‥
多分キリーエが撃ったら腕がもげそうだ。
しかし‥
成功だ。
圧縮火薬を使ったミスリルの弾を飛ばす事ができた。
半端ない値段の弾になるが、キリーエには相応しい気がする。
1つのミスリルのインゴットで50発くらいしか弾は作れない。
インゴット1つで恐ろしい程の値段がするからな、あんまり作っても勿体ないから、作るのは100発ほどにしておくか。
ミミウのノームたちが時々鉱物を発見して保管しているが、それでも無駄に使えるほど数があるわけじゃないしな。
回転式拳銃に衝撃吸収の魔力回路をつける。
これで完成だ。
これがあれば、今まで戦闘でフォローに回っていたキリーエも援護ができる事になるな。
気配を消して、見えないところから銃を撃つ。
気配がない、音がしない‥‥撃った衝撃もない‥‥‥‥‥あれ?キリーエって暗殺者だったっけ‥?
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