第757話
この駄女神め‥
たぶんコイツはタルタルソースをのせるまで光るつもりだ。
もしのせなかったら、周りの目など気にせず全力で光るはず。
せっかく身を隠しながら行動しているのに、そんな事をされたら全て水の泡だ。
今回は大人しく負けを認めよう。
しかし‥
わかった‥
これからは戦争だ!
今回が最後の晩餐だ。
これから後にまともなタルタルソースを食べれると思うなよ!
お前のためにキリーエにお願いして、何としてもワサビや唐辛子を見つけてもらうからな!
今この場での事を後で後悔するがいい!
「マ、マルコイさん‥?それはこの前の宴で出されていたタルタルソースですよね?確かに絶品との事で、王が城の料理人に同じのを作るように伝えて三日三晩食べていましたが、それをのせるのですか?」
「イェルンさんは食べなかったのですか?」
「ええ。食べなかったというか、食べる機会がなかったのです。宴で出た時は、気づいた時にはなくなっていて、城の料理人達が作った物は全て王が食べてましたから。」
王様何をしてるんですか‥?
「神聖国の聖王様が、女神に供えるならタルタルソースがいいと言っていたのを思い出しました。試しに置いてみましょう。」
「そうなんですか?」
イェルンさんが不思議そうな顔をして女神像を見ている。
まあそうだよな。
なんで神様がタルタルソース食べるんだって話だ。
「あくまで神聖国の聖王様が言っていた事です。俺の考えじゃありませんからね。神聖国の聖王です!わかりましたか?」
「は、はい!わ、わかりました!」
よし、これだけ言っておけば俺のせいにはなるまい。
すまないグルンデルさん。
俺が女神像が持っている皿にタルタルソースをのせる。
すると‥
女神像の持つ皿が淡く光ったと思ったら、のっていたタルタルソースが消えていた。
「なっ!そ、そんな!今まで何を置いてもそのままだったのに、タルタルソースを置いた瞬間に消えた!?」
どれだけ食べたかったんだよ。
そして周りを気にしてか、皿だけ光らせやがった。
そんなところに気を使ったところで、戦争は終わらんからな!
ポンコツ女神め‥
「な、なんて事だ。や、やはり女神は私達を見守ってくれていたんですね。この国の姫が亡くなった時には神の存在を信じられなくなりましたが‥」
おい、ちょっと待て。
何をこんな事で重要なフレーズをポロッと言ってるのかね?
「この国の姫は亡くなったのですか?」
「はい。いえ、正確には行方不明ですけどね‥当時戦争中で姫を安全な場所に移動させる時にモンスターに襲われ、護衛していた者だけが生き残りました。その者は姫を抱いていては2人とも死ぬと思い、木陰に姫を隠し瀕死になりながもモンスターを倒しました。しかし姫の元に戻った時には姫はいなかったと‥おそらく別のモンスターに襲われたと‥」
なるほど‥
これだけで決めつけるわけにはいかないけど‥
あまりにもピースが揃い過ぎているよな‥
王様を救出する理由がもう一つ増えたな。
俺が手に持っているタルタルソースの入れ物から目を逸らさないミミウを見ながらそう思った。
入れ物を動かすとミミウの視線がついてくるのが面白いんだが‥
「いや、それよりも女神像の事です!マルコイさん!そのタルタルソースをもっと女神様にお供えください!」
いや、それよりもって‥
俺としては駄女神のことよりもドワーフの姫の事のほうが大事なんだけど‥
しょうがなく皿の上にどぼどぼとタルタルソースを注ぐ。
タルタルソースが注がれるが皿から流れ出ることはなく、入れた側から消えていく。
おい、神聖な演出はもういいのか?
いや、最初から神聖でも何でもなかったけど‥
「おお!や、やはり‥これは何としても王を救出して、女神様に捧ぐタルタルソースを国をあげて作らねばなりませんねっ!」
いやもういいって‥
魔王が世界を征服するよりも‥
タルタルソースが世界を征服する日の方が早い気がする‥
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