第756話

「さて、どこで話をしようか‥イェルンさん、どこかいい場所ありますか?」


「そ、そうですね。私の親族の家などは見張りがいると思いますから‥近くの教会であれば今の時間帯なら誰もいないかと。」


それじゃあ早めに移動しないとな。

これだけ騒ぎを起こしたんだ。

急がないとまた追手が来てしまう。


そう思っていると空に気配を感じる。


まさか銃以外にも空を飛べる魔道具を作ってるのか?


俺が警戒しながら空を見上げていると、見知った声が聞こえてきた。


「アレカンドロ。あそこ。」


「おお!やっと見つけましたな!ミミウ殿も一緒のようでよかった!」


スキルを使って飛んでいるアレカンドロにリルがくっついていた。


俺たちを見つけたリルたちは、そのまま地面に降りてきた。


「おいおい。お前たちも来たのか。」


「ミミウいなくなった。探してたらマルコイ見つけた。」


物すごいドヤ顔のリルがいる。


いや、そんなドヤ顔する所じゃないからね。

確かにアキーエが中に入って、俺が転移してついて行くと言っただけで、中に入るなとは言ってなかったけど‥


「まあいいや。王様を救出するまでは大人しくしておきたかったけど、騒ぎを起こしてしまったからな。」


「その件なら問題ないよ。うちがギルドマスターから話を聞いてきたさかい。」


「そうか!それなら早く行動しないとな。それじゃあ移動するとしよう。」


俺たちはイェルンさんを先頭に場所を移動する事にした。

なるべく早めに動かないと人が集まってきそうだからな。



‥‥‥‥‥何か忘れてるような気がするけど‥‥


まあいいや。

大した事じゃないだろ。








イェルンさんが言っていた教会についた。


辺りが暗いのと、アキーエが起こした騒ぎの方に衛兵たちが向かったようで、特に人と会う事なく着くことができた。


古い教会だが、手入れが行き届いているようで小綺麗にしている。


教会に来るのは神聖国以来だな。


扉から入り中を見渡す。


女神の像が中央奥に鎮座している。


ん?


以前見た事がある神像と少し様子が違うような‥?


「あ、マルコイさんも気になられました?こちらにある女神像なんですけど、マルコイさん達が魔族を討伐された後にこのような姿になられまして。その時は神の奇跡だと大騒ぎになりました。その後は特に変わった事もありませんでしたが、定期的にお供えをするようになりました。」


そ、そうなんだ‥

もう悪い予感しかしないんだけど‥

だってそうだろ?

この女神像、皿を持ってるんだぞ。


コイツ‥


たぶん俺たちがここに来るのをわかってて皿を作り出しやがったんだ。


しかし残念だったな。

今はそれどころじゃないんだ。

抱えてる問題が解決したら相手してやるから少し待ってもらおう。


女神像から目を逸らす。

すると視界の端で何かが光った。


「えっ!い、今女神像が光りませんでしたか!?」


こ、こいつ‥


時と場合を考えやがれ!

俺だけならまだしも、イェルンさんとかいるんだぞ!


「そ、そうですか?イェルンさんの気のせいじゃないですか?」


「いや、今絶対光りましたよ!」


ほら!

こうなるんだって!


「いやだなぁ、イェルンさん。今日はいろいろあり過ぎて疲れてるんじゃないですか?」


俺はイェルンさんの肩を持ち、女神像が見えないように身体を反対に向ける。


それを見ていたかのように、女神像がまた淡く光る。


こ、こいつ‥

今の状況をわかっててやってやがる!


「た、確かに光りましたぞ!」


お、お前クィリーノさんにも見つかってんじゃないかっ!


くそっ‥

こうなったら仕方ない‥


「た、確かに光ってらっしゃるみたいですね、この女神像さまは!確か風の噂で聞いたのですが、女神像が光る時は神聖国ではこの皿にある物をのせたらいいそうです。試しにのせてみましょうか‥」


俺はそう言って『スペース』からタルタルソースを取り出した‥








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