第748話
木偶人形たちはそれぞれが意思を持っているかのような動きで外の警備兵へと近づいていく。
俺が人工核に登録しているのは『外にいる動く相手を脅かしてこい』である。
これが人に伝えた内容なら、ちょっと脅かしてやろう程度になるのだが、木偶人形に与えた人工核はこれを忠実に実行しようとする。
例え相手が驚いて心臓が止まろうとも関係なく、とにかく相手を驚かす事に全力をかけるわけだ。
まあそれがどういう事かと言うと‥
「うわっ!な、なんだ!」「ひやぁっ!く、くるなっ!」「た、たすけて!」「こ、こっちにも!ああ‥あ、悪魔がっ!」
うむ。
阿鼻叫喚である。
「くそっ!‥‥‥な、なんでだっ!なんで動けるんだ!うわっ!も、元に戻った!」
お?
対リル用に作った新作木偶人形に当たったやつがいるな。
新作木偶人形は木偶人形に慣れてきたリルのために作った奴で、関節ごとに脱着できるタイプになる。
各関節には磁石を取り付けており、外れた後も魔力により元に戻す事ができるのだ。
事の発端は家に警備用で置いていた木偶人形を、リルが夜起きて驚くたびに斬りつけて壊していたのが原因だ。
その度に新しい物を配置するのも面倒だし、壊される木偶人形たちも可哀想なので、斬られても元に戻れるような物を作ったのだ。
衝撃を受けたら簡単な外れるようにしていて、俺が斬りつけてもその部分から外れてまた元に戻っていた。
しかしリルが斬ると木偶人形が衝撃を受けた時には斬れているというリルの技量の高さに驚愕する結果となった‥
俺だって頑張れば斬れるはずだ‥多分‥
しかし対リル用で作ったが、リルには効かなかったので全く意味がないかと思っていたが、こんなところで役に立ってくれたな。
「それじゃあ行きましょう。混乱している今なら問題なく出れるはずです。」
「わ、わかりました。」
イェルンさんとクィリーノさんは速やかに準備をして俺に続く。
「一体何が起こってるんですか?」
何が起こってるんかぁ‥
まあ地獄絵図が広がっているというか‥
見てもらった方が早いかな。
俺たちは家の外に出る。
警備兵たちの叫び声が響き渡っている。
すると一体の木偶人形が近づいてきた。
浮遊タイプの木偶人形で、小さな女の子のような姿をしている。
「ひっ!ひぃ!お、女の子が浮いている!」
おお!
イェルンさん、ナイスなリアクションだ。
イェルンさんが木偶人形を指差すと、木偶人形が小さく震え出す。
「キャーーーーッ!」
木偶人形が甲高い声で叫んだ。
ドラゴンに【アバター】を使って乗り移った時に使用した声帯を簡素化して叫び声だけを上げれるようにしたんだが‥
いいね。
本当に小さな子が叫んでいるように聞こえる。
「ぎゃーっ!」
驚いて走って逃げようとするイェルンさんをクィリーノさんが捕まえる。
「大丈夫ですよ、イェルンさん。これは俺が作った魔道具ですから。」
「こ、これがマルコイさんが作った魔道具?こ、こんな恐ろしい物を作ったんですか!?何の為に!?」
何のため‥?
何のためだろう‥?
何となくかな?
「まあ人に危害を与えなくて混乱させるなら、これほど適した魔道具もないでしょ。」
「そ、それはそうですけど‥実害はないんですか?」
「ええ。今出したのは脅かすのを目的に作ってますからね。特に攻撃したりはしませ‥」
俺たちがいる場所と家を挟んで反対側から、物凄い爆音が聞こえた‥
ん?
敵か?
もしかして懸念していた爆弾を使ったのか?
何も実害はないとはいえ、兵たちはわからないからな‥
倒す為に爆弾を使ったとしても無理のない話ってところか‥
「う、うわっ!あ、あいつ爆発したぞ!と、突然抱きつかれたと思ったら爆発しやがった!」
‥‥‥‥あるぇ?
あ、もしかして出した木偶人形の中に『抱きついて爆発君』が混じってたのか?
サントバルの時に使えたので、結構増量してたけど間違えて出したみたいだ‥
「マ、マルコイさん実害って‥」
き、気にしない!
逃げる為には必要な事だったんだ!
「は、早くいきますよ!」
俺たちは逃げるようにその場を後にした。
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