第741話

「なんだと!いったいどういう事なんだ?イェルンさんはこの国の宰相だろう?だとしたら新しく王となった方も、そんなにぞんざいには扱わないんじゃないのか?」


もう少し頑張ってみよう。

俺はそう思い、困った表情を浮かべて男に問いかける。

昨日のアキーエより少しは演じれてるかな‥?


「まあな。だがイェルンには前王を匿っている可能性があるからな。それに目障りだろ?前王の時から宰相やってるやつなんてよ。なんだかんだ理由つけて排除するに決まってるじゃねえか。今までイェルンが生きてるのが不思議なくらいだな。その辺の理由は下っ端の俺らにはわからねえけどな。」


なるほど。

何らかの理由があって、ヨエクはイェルンさんにまだ手をだしていないわけか。


よかった。

1番大事な確認ができた。


「それと俺が狙われる理由に関係あるのか?」


「さあな。新王様からお達しがあっただけで、俺らもよくわからないさ。俺たちがここにいる理由は、『イェルン家に近づく者を全員を身ぐるみ剥いで素性を確認しろ』だからな。」


ふむ。

イェルンさんに誰かが近寄るのを防ぐためか。

しかし身ぐるみ剥ぐ理由はなんだ?

何かを確認したいのか?


「さてそれじゃそろそろいいか?大人しく身ぐるみ剥がされると手間が省けるんだがな。それとここまで話したんだ。お前は事が終わるまで、地下牢に幽閉させてもらうぞ。そのままだと面倒だから動けなくしてな。恨むんなら話を聞いてしまった自分を恨めや。」


男の銃口は俺の眉間に向けられ、そこから肩あたりに移動した。


「腕の一本はもらおうか。そしたら話しやすくなるだろ。ふひひひ。」


下卑た笑いだな。


多分自分が持ってる力を余程使いたいんだろう。


男の持っている銃は銃口が2つついている。

おそらく連続で2発撃てる仕組みになっているのだろう。


だから威嚇として1発放ったが、もう1発撃てるので余裕があるんだろうな。


しかしその1発を外したらどうするつもりなんだろ?




2連続で撃てる銃か‥


俺が作った単発の銃よりも使いやすくなっている。

それに飛ばす弾が小さいのか、銃口も小さい。


ボヤンが作った武器のようにガトリング式じゃないみたいだな。

あの発想が有ればもっと凄いのが作れそうな気がするんだけど‥


まあそれでも‥


欲しいなアレ。


ふふふふふ。

キリーエから話を聞いた時に、一丁欲しいなって思ってたんだよなぁ‥


まさかこんなにすぐに、その機会が訪れるなんて。


もうこいつから聞ける話はなさそうだし、ぶっ飛ばして貰っていいよな?


「どうした?ビビって声も出ないのか?」


「一応聞いておくけど、お前が知ってるのはそのくらいだよな?」


「は?何を言ってるんだお前?」


「いや、一応確認しておこうと思ってな。まあいいや。ボコってもう一度聞いた方が早いか。」


「何だお前?おい、お前らも構えろ!こいつ何かするかもしれないぞ!」


おいおい‥


まだ持ってたのか!

一丁もらおうと思ってたのに、三丁ももらっていいんですか?


「何をニヤけてやがる!喰らいやがれ!」


おっと。

思わず顔がニヤけてましたか‥


男の持つ銃の銃口から弾が発射される。


俺は魔力を練って準備していたスキルを発動する。


エンチャント:守護する者


エンチャントを発動すると同時に身体を薄い膜が覆う。


男の持つ銃から放たれた弾は、その膜に当たると勢いを無くして地面に落ち、そのまま転がった。


「なっ!魔法か!?おいお前ら撃て!魔力を練る前に撃ち殺せ!」


おいおい。

殺せなんて物騒だな。


男の声に反応して、俺の後ろにいた男たちが銃を撃つ。


よしよし。

エンチャント:守護する者の魔力壁だと殆どの攻撃を防ぐから、銃の威力がわからなかったんだよ。


今度の弾はしっかりと威力を調べさせてもらおう。


エンチャント:守護する者を発動させた状態ならダメージを喰らうかな‥?

ふひっ。





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