第740話

翌日から俺たちは王様の行方を探すことにした。


ただ、ヨエクがあれだけの人を動員して見つからないのだ。

俺たちが普通に探した所で見つかりはしないだろう。


だからアキーエたちは冒険者ギルド、俺はイェルンさんの元に向かう事にした。


冒険者ギルドには昨日アキーエが足を運んだが、もしかしたら監視のある中では話せなかった事があるかもしれない。


今日行っても監視があるのは変わらないだろうが、昨日とは違いキリーエがいるからな。


アキーエが監視の目を集めている間にキリーエがギルドの幹部から話を聞けたら御の字だ。


そして俺はイェルンさんを探す事にした。


ヨエクと同じ立場であったが、ヨエクは将軍として軍部を掌握していた。

宰相として文官を率いていたイェルンさんが戦うという選択はとれなかっただろう。


とりあえずイェルンさんの家に行ってみる事にする。

ヨエクもイェルンさんもトールルズでは名家のはず。

だとしたら直ぐにイェルンさんを手にかけるだろうか?


だがイェルンさんはおそらく王様についているはず‥

そのイェルンさんをほっとく事をヨエクとしてはよしとしないよな‥


色んな考えが交錯する。


もし俺がヨエクだとしたら‥

王様を見つけるのを優先するが、イェルンさんが匿ってるかもしれないなら強硬手段にでるだろうな‥

そうなる前にイェルンさんとコンタクトをとりたい。


だがその前に確認しとくべき事があるな‥




俺はイェルンさんの家がわからないので、街でイェルンさんの家を聞く。


「すみません、ちょっとお尋ねしたいんですが宰相のイェルンさんの家を教えてもらっていいですか?」


俺が街を歩いている人に声かけると、数人が反応した。


街を見回っている衛兵もそうだが、普通に街の人のような格好をしている人も反応した。


衛兵以外に3人。


2人は顔が強張っている。

おそらく今この街の状況で、そんな事を聞く奴がいないからだろう。


そして1人はこちらを鋭い目で見つめている。


ほお。

ヨエクのくせに、衛兵以外にも自分の配下を街に紛れ込ませているわけか。


俺は驚きの表情を浮かべながらも親切に場所を教えてくれた人に感謝を伝えて、その場所に向かう。


俺が向かう方向に、一緒に動き出した人を確認してから。




人通りが少ない所を歩いていると、後ろからついてきていた奴らが動き出した。


「おうおう。冒険者さんがこんな所に何のようだ?ここから奥はお偉いさんが住む家だ。それと?ここらは俺らの縄張りでな。ここを通るには通行料を払ってもらおうか?」


2人組の男たちが後ろから声をかけてきた。

声をかけながら、1人の男は俺の行く手を防ぐように進行方向に移動する。


「へえ。通行料っていくらだ?」


払うつもりはないけどな。


「そうだな。あり金全部と装備品置いていけ。それとお前の名前とここに来た理由を教えててもらおうか。」


「嫌だと言ったら?」


「そりゃ痛い目にあってもらうさ。」


男たちは腰にぶら下げていた銃を手に取る。


おそらく俺が銃の存在を知らないと思ってるから余裕なんだろうな。


「なんだそりゃ?そんな飾りのついた鉄の棒で冒険者の俺をどうにかできると思ってるのか?」


「ああ。こいつを使えばどんな奴でもビビって言う事を聞くからな。」


男は俺に向かって銃を構える。


そして銃口を下に向けて発射した。


甲高い音が響き、俺の足元が弾ける。


「うおっ!な、なんだそれは!?」


俺は少し後退りする。


「ふはっ!どうだ驚いたか?これは火薬筒と言ってな、鉄の塊を飛ばす武器だ。お前がどんなに早く動いてもこいつがお前を撃ち抜く方が早いぜ。」


「く、くそっ‥お前らいったい何者だ?俺がどこに行こうが勝手だろうが!」


「そうはいかないんだよ。お前が行こうとしている家は特にな。」


「俺はただ内乱が起こったと聞いたから、知り合いのイェルンさんが心配で家に行ってるだけだ!お前たちこそ何でこんな事をしている!イェルンさんの身に何かあったのか?」


「イェルンは家に篭ってるから無事さ。まあそれも新王であるヨエク様の準備が整うまでだがな。」


ふむふむ。

なるほど。

それじゃあもう少し教えてもらおうか。






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