第737話
アキーエがいる部屋に人が入ってくる気配がした。
「どうした!いったい何の騒ぎだっ!?」
衛兵が数人焦った様子で部屋に入ってきてアキーエに問いかける。
「こっちが聞きたいですよ。何もしていないのに、突然壁が爆発したんです。その後誰かの話し声が聞こえましたけど‥」
アキーエさん女優ですな。
自分が火魔法でちょっかい出した事は言わないんですね。
しかしもう少し台詞に感情を込めた方がいいのでは‥
まったくの棒読みになってますけど‥
「そうか‥隣の部屋に隠れていたのかもしれないな‥わかった。ここは危険だから宿を変えるといい。協力感謝する!」
衛兵はしばらく部屋の中を確認して出て行ったようだ。
部屋の中にアキーエ以外の気配がなくなったのを確認して窓から部屋に戻る。
「えっと‥マルコイ?」
はっ!
そうだった。
アキーエにこの姿を見せるのは初めてだったな。
どうだこの闇に溶け込むようなカッコいいスタイルは?
「えっと‥そのワカメは標準装備なの?だとしたら‥う、うんそうね。カッコいいわ‥よ。」
気をつかわせてしまってすみません‥
決してワカメは標準装備ではありません。
このワカメは責任持って剥がして捨てさせてもらいます。
はっ!
何故かミミウに怒られる気がする‥
そ、そうだ。
ちゃんと剥がして美味しく調理させてもらいます‥
「そんな事よりマルコイ‥わ、わたし爆発するような魔法なんて使ってないのに、何であんな風に爆発したの?」
「そ、そんな事よりって‥ま、まあいい。それについては心当たりがあるが、とりあえず宿を変えておいたほうがよさそうだぞ。」
部屋にまた誰かが向かって来ている気配がする。
宿の人かな。
俺は再度窓から屋根に上がる。
その後アキーエは事情を説明して別の宿に移ることにした。
後で聞いたが、アキーエは突然爆発したと伝えて宿を移動したそうだが、かなり多めの宿代を払って引き払ったそうだ。
できれば逃げたやつをとっ捕まえて払わせてやりたかったな。
今度見つけたら追い剥ぎしてやるとしよう‥
屋根で身を隠して、アキーエが持っている魔道具の魔力を探すと新しい宿に着いたようだった。
俺は屋根伝いに移動してアキーエの宿にたどり着く。
窓を軽く叩き、アキーエに窓を開けてもらい中に入る。
そしてすぐに変装用の魔道具を解く。
決してワカメが恥ずかしかったわけではない‥
「あ、結局脱ぐのね‥」
うるさいな‥
「ところでアキーエ。街に入ってからの様子を聞かせてもらっていいか?」
「そうね‥ごめんマルコイ。特に目立った情報はないわ。最初にギルドに寄ったんだけど、通常通り運営していたわ。ただどこもそうなんだけど、街の至る所に衛兵がいたわ。まるで監視するように。もちろん冒険者ギルドにも数人いたわ。みんな2人1組でギルドにいる人に対して睨みを効かせてた。それにギルドに入る時も出る時もギルドカードを確認されたわ。」
なるほどな‥
ギルドから情報を漏らさないようにするためか。
反乱があってから、ここにいる冒険者は誰1人外に出ていないんだろう。
衛兵が2人1組でいるのは互いを監視する意味もあるんじゃないか?
もちろん街の人を監視する役目をしているが、ペアを組んでいる衛兵同士が前王側につかないようにするためだろう。
相手がヨエクと繋がっているかもと思ったら、お互い迂闊な行動を取れなくなるからな‥
しかしおかげでわかった事もある。
おそらく王様はまだ捕まっていないんだろう。
これだけ街の出入りを厳重にして街の監視を重視しているのは王様を見つけ出すためだな。
よかった、何とか間に合ったみたいだ。
「あとギルドにもきちんと話をできなかったわ。ギルドマスターと会う事は出来たんだけど、話には衛兵も同席してて。ギルドマスターも無事だから安心してほしいとしか言わなかったし‥」
もし匿ってるとしたらイェルンさんたちかもしれない。
どうにかして接触してみないとな‥
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