第736話
「恵ちゃん、貴方はマルコイが突然今の王様をぶっ飛ばしたらどうするの?もしくは突然街中で大爆発を起こしたら?何千体という人形を街中で放つかもしれないのよ。その時に恵ちゃんはマルコイの耳を引っ張ってやめさせる事ができる?」
「うっ‥そ、それは無理ですけど‥でもいくらマルコイさんだってそんな事するはずが‥」
「するのよ。マルコイは。王様が見つからなかったら、ヨエク将軍を空に打ち上げるかもしれないわ‥それにはわたしも反対しないけど‥‥とにかくマルコイと対等じゃなきゃダメなのよ。貴方みたいに護って貰う人じゃね。厳しい言い方でごめんなさい‥」
「ううん。わかりましたアキーエさん‥ごめんなさいわがまま言って。」
「いいのよ。貴方の気持ちはわかってる。焦ってしまったんでしょ?みんな同じ気持ちになった事があるわ。だから今度みんなで話し合いましょう。」
「はい。」
アキーエは恵の頭を撫でながらその身体を抱きしめてやった‥‥‥
うむうむ、仲がいい事はいい事だ‥‥
ってうぉい!
誰が常識外れじゃい!
恵を説得できたから我慢するけど、釈然としないないぞ!
まったく‥
‥‥‥‥しかしさっきアキーエが言ってた方法は駄目なのか‥
王様が見つからなかったら今アキーエが言ってた事をひと通りやるつもりだったんだけど‥
アキーエがそういうなら別の方法を考えておこうかな‥
話し合いの結果、中にはアキーエが入る事になった。
「それじゃあ行ってくるわね。とりあえず冒険者ギルドを確認して宿をとるから。陽が落ちたら部屋にいるわね。」
「ああわかった。くれぐれも気をつけるんだぞ。」
「わかってるわよ。出来るだけ情報を集めておくから期待しておいてね。」
「無茶するなよ。」
俺の事を常識外れと言うが、アキーエもなかなかの物だと思うんだけど‥
街中で爆発音がしたら、すぐに転移で向かうとしよう‥
しばらくして陽が落ちたが、街中で爆発音は聞こえなかった。
よかった、特に何もなかったみたいだな‥
アキーエにちょっかい出したやつが丸焦げになる事態は免れたようだ‥
キリーエたちに野営の準備をしてもらい、周りを確認してからアキーエに渡している魔道具の魔力を辿って転移を行うために魔力を練る。
すると突然街中から爆発音が上がった。
噂をすれば何とやら!
アキーエの身に何かあったのかもしれない。
俺は急いで転移を行う。
視界が変わる。
先程までの薄暗い月の明かりの下ではなく、部屋に置いてあるランプの明るさだ。
すぐ目の前にアキーエがいる。
「どうしたアキーエ!?」
「あっマルコイ!ごめんさない。ちょっと騒ぎを起こしちゃった。でもわたしがやったわけじゃないんだけど‥ごめんなさい。」
アキーエが起こした騒ぎじゃない?
そんな馬鹿な。
「わたしもよくわからないの。ずっと監視されてて‥宿でも聴き耳立てられてだから、ちょっと脅かすつもりで小さな火魔法を使って服を焦がそうとしたら突然爆発したの‥」
なんだって?
それってもしかして‥
外から誰かがやってくる音が聞こえる。
「アキーエ。俺は少し隠れるぞ。」
まだ見つかるには早すぎる。
俺は外に出ようかと窓から外を見る。
外には爆発音を聞いてか野次馬が集まっていた。
転移を使って街の外に出る事も考えたが、何があるかわからないので魔力は温存しておいた方がいいだろう。
俺は腕に魔力を流し、変装用の魔道具を発動させる。
これなら外の暗さで闇に紛れる事ができるだろう‥
ただ気になるのは、海に浸かった後に洗えずにいたから、ところどころワカメがついているところだろうか‥
まあ小さい事は気にしない。
俺はそのまま闇に紛れるように窓から屋根の上に飛び移った。
「うわっ!何か上から降ってきたぞ!な、なんだこれは?ワ、ワカメ?」
決して気にしない‥
例え空からワカメが降ってきたとしても、それは決して俺のせいではないはずだからだ‥
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