第730話
ボヤンは話しかけてきた卓を見ながらため息をつく。
「小僧‥冒険者が飯の種であるスキルをそう易々と教える訳あるまい。」
「そ、そんなぁ‥」
ちっ!
そう言えば、そんな事をどっかの誰かが言ってたような気がする‥
「あら残念。わたしもボヤンさんの武器に少し興味があったんだけど‥」
おお!
アキーエ、ナイスアシスト!
「え!あ、爆殺女神‥アキーエさんがそう言われるなら‥」
今明らかに最後まで言ったよね。
爆殺女神って最後まで言ったから誤魔化せないよね?
「俺のスキルは【工芸機械士】と言って物を作るのに特化しているスキルです。過去にあった道具の復元や、それを元に新しい道具を作る事もできます。」
なるほど。
スキル【工芸士】ではなかったが、系統進化したスキルなのかな?
(ピコーンッ)
『模倣スキルが発現しました。スキル【工芸士】を模倣しました』
やった!
あとはこれがどこまでのスキルかってところだな。
もし異世界の知識の中で知った物が作れるようになれば、今よりももっと優れた魔道具を作る事ができそうだ!
「ほうほう!それでは【工芸機械士】の機械とは?」
うんうん。
いいね、卓。
痒いところに手が届く感じだよ。
俺は心の中で小躍りしながらボヤンの言葉を待つ。
「それがわしにもよくわからん。人が作ったカラクリは再現できるし、昔見た事のあるものはスキル【工芸士】の時から作る事が出来とった。【工芸機械士】になったからといって特に変わった事はない。」
ふむ‥
そんなはずはないだろうけど‥
おそらくこの世界に機械というものがあまりない事が原因なんじゃないかな‥
簡単な動作する物ならあるし、それこそアーティファクトの一部にあるような複雑な物なら解析するのに役に立つのだろうが、一介の冒険者がアーティファクトに触れる機会などないだろう。
そうか‥
俺が【工芸機械士】を模倣する事ができたら、異世界の機械を再現する事が出来たかもしれないな‥
まあない物ねだりってとこかね。
「なるほど‥そのスキル【工芸機械士】を使って、あの連射する道具を作ったわけですね!あれは素晴らしかったです。まるでガトリングガンを彷彿させるような出来でしたよ!」
「ガトリングガン?」
「あ、僕の故郷の武器です。」
そういえば最初にそんな事を言ってたな‥
連射できる武器か‥
木偶爆弾を連射できたら面白いかもな‥
例えば木偶爆弾を今より小さくして、威力は落ちるけど連射性能に優れた武器なんかも面白いかも。
肩に担いで木偶爆弾を連射するとか、メンセンが似合いそうな気がする‥
もう少し小型化したらラケッツさんに持たせるのも面白いかも。
とりあえず木偶爆弾が中で爆発したら怖いから、ラケッツさんに実験してもらいながら作るとしよう‥
「その武器って今見る事できます?」
アキーエの名アシストが冴える。
「ん?いいですぞ。これはわしが作った、今のところ最高傑作の代物です。」
ボヤンは揺れる馬車の中で、器用に武器を出してくれた。
組み立て式のもので、地面に設置してから使うようで重量はかなりの物のようだ。
ボヤンがドワーフだから持ち運びできているが、これがラケッツさんだと厳しいそうだな‥
俺は『スペース』に入れて持ち運ぶから重さは関係ないが、軽量化は必須だな。
「ここに矢を入れて、このレバーを回すと矢がセットされて飛び出す仕組みです。さらに回せば矢がまたセットされて飛び出す。これで連射して矢を放ってるわけです。あとは矢にも工夫がありまして‥」
俺はボヤンが出した連弩を見る。
すると中の構造や矢が連続で放てる仕組みがわかる。
なるほど。
だとしたら、あの矢を放つ部分を強いゴムではなくバネにする事で小型化する事ができるな。
それにあの仕組みだとすぐにゴムが劣化して取り替える必要があるだろう‥
模倣スキルだが【工芸士】か‥
思ったよりも、異世界の知識と相性が良さそうだ‥
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