第731話

俺たちは丸三日かけて獣人国に戻ってきた。

トールルズに行く時は結構無理したみたいだけど、今回は時間にゆとりもあったから、ゆっくりと帰ってきた。


ギルドにはバラックスさんが報告してくれるという事だったので、自宅に戻る事にした。


神聖国や帝国の状況などが気になるから、一度ギルドには足を運ぶ必要になるとは思うけど、今日は疲れたからな。


「ただいま。」


俺が家に入りそう告げると、家の奥の方からドタドタと走ってくる音が聞こえた。


音の主は片手にバケツを持ち、もう片方に雑巾を持ってこちらに向かって走ってきた。


「ご主人様!おかえりなさいませ!」


うん。

もう悪い予感しかしないよ。


ベアトリスは何もないところで躓き、盛大に転ぶ。

もちろん手に持っていたバケツを放り投げて。


何故何もない所で転ぶのだろう‥

自分の足が引っ掛かったわけでもなく、地面に突起物があるわけでもない。

まるで誰かに背中から押されたように派手に転んでいる。


まあベアトリスの属性については今後検証するとして、とりあえず飛んできたバケツを避ける。


アキーエやリルはもちろん、ミミウさんも予想していたのだろう、サッと避けた。


バケツは綺麗な放物線を描いて正人の上に落ちる。

もちろん逆さまで。


「ぶふぇらっ!」


バケツは中に入っていた真っ黒な水を正人にぶちまける。


うわっ、うちってあんなに汚れてるんだなぁ‥


バケツは正人の頭にすっぽりと入り、正人は前が見えずにオロオロしている。


「はわわわわ、すみません!」


ベアトリスは正人に駆け寄るが、その途中でまた躓く。


ベアトリスは前が見えず、無防備になっている正人の下半身の真ん中あたりに頭から突っ込む。


「ぷぎゃっ!」


ひっ!


なんて強力な攻撃だ。

相手の視覚を奪って一撃必殺とは‥


ベアトリスって実は勇者抹殺を狙う、魔王の刺客とかじゃないだろうか‥


正人はうずくまって悶絶している。


死ぬな正人‥


そういえばベアトリスってバドリックさんが戦闘もできるって言ってなかったか?

でもこんな調子で闘う事なんて出来るのかな‥?


試しにベアトリスを【技能眼】で覗いてみる。


するとベアトリスはすぐに反応して手に持った雑巾ごと正人の頭を押さえつける。


「みなさん!誰かに観察されています!頭を下げて、物陰に隠れてください!」


おお。

反応が早いし、指示が的確だ。


ただ正人が濡れた雑巾のせいで窒息しそうになってるけど‥


ベアトリス

スキル【命中】

攻撃の命中率に補正が入る


「ベアトリスすまない。見られている感覚は俺のスキルのせいだ。俺の持っているスキルの一つで、相手のスキルを見る事ができるんだ。ベアトリスのスキルが気になってね。」


「そうなんですか。私のスキルは【必中】になります。私の攻撃がどれだけ下手でも、スキルが支援してくれて相手に当たりやすくなるんです。武器の軌道や飛び道具なんかにも補正が入るんです。」


(ピコーンッ)


『模倣スキルが発現しました。スキル【命中】は譲渡しています。スキルを模倣できません』


確かにキリーエに譲渡しているスキルだから模倣は無理だろう。


それよりも‥


正人に対してのアクシデントは【必中】が補正しているのだろうか‥


だとしたら、正人は一生ベアトリスの攻撃を避ける事が出来ないような気がしてきた‥

がんばれ正人‥




さて、獣人国に戻ってきたが、俺がやる事はいつもと一緒だ。


魔道具作りに、今回は鍛治もやってみようと思う。

リルに剣をやるって言ってたからな。


また1週間くらいで戻らないといけないから、剣とボヤンの話を聞いて作ってみたくなった魔道具を作るくらいにしておこう。


鍛冶場で剣を作り、考えていた魔道具を卓と一緒に作る。


いや〜、最高の時間だね。


今度親交の証にトールルズの王様にも何か魔道具でも作ろうかな。


正人たちにも勇者の武器を作ってやりたいけど、とりあえずトールルズに行ってから考えるとしよう。


もちろん魔道具の勇者にもちゃんと新たな武器を作らないとな!







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