第720話

6本の腕が器用に動いている。


それぞれが独立して違う事をしているようだ。


全ての腕がうにうにと動いているので、見ているこっちは少し気持ち悪い。


「うそーん。」


はっ!

つい俺らしくない間抜けな声が出てしまった。


しかし何故だ?

俺にはあんな事できないぞ。


「キリーエさんや。どうやってそんな動きをさせているのかね?」


「え?別に大した事じゃないわよ。それぞれの動きを考えながら動かしてるだけだよ。」


いや、それが出来ないから聞いてるんだけど‥


「うちは【並列思考】があるからやない?6本くらいやったら全然いけるで。」


そうかそうだった。


キリーエさんってばそんな優秀なスキルを持たれてたんですね。


「マルコイさん、これもろてええ?」


「いいけど何に使うんだ?」


「これだけ腕があったら色々と便利やろ。それにこれがあったらうちも戦えるかもしれんやろ?」


確かに。


「だったら戦闘用に色々とつけとくよ。」


「助かるわ。ほんなら練習で少し借りとくさかい、つける時は言うてな。」


そしてキリーエが薄くなる。

いやいや、流石にアシュラ君を背負ったまま存在を消すなんて真似が‥


「ほなあとでな〜」


姿のないキリーエの声だけが響いた‥

全くどうなってんだ一体‥


世界には常識で考えられない事がたくさんあるなぁ‥





とりあえずコカトリス2匹を吊り上げた状態で作業を‥間違えた調理を続ける。


コカトリスに水飴をかけて艶が出てきたので、別のところにかけて魔法で乾燥させる。


その間に別のコカトリスをまた吊し上げて水飴をかける。


魔法で乾燥させていたコカトリスもいい感じになってきたようだ。


油の温度を確かめて揚げていく。


そして水飴をかけていたコカトリスを魔法で乾燥させて、新しいコカトリスを吊るして‥


あれ?


俺今結構な数の事を同時にやってないか?


な、なるほど‥


人ってミミウの料理のように同じ物を何度も作ると、動きを効率化させて色んな事を同時にできるようになるんだな‥


ひとつ勉強になったよ‥


これでミミウの料理も怖くないぞ!


なんか目から水が出てきそうだけど、気にしないやい‥



「わぁー!凄いですっ!鳥さんがたくさんですぅ!」


何匹か出来た時にミミウがやってきた。


多分宴で出ていた料理を平らげてきたのだろう。

会場から悲鳴が上がっている。

大丈夫だ。

厨房にはすぐになくなるから、料理を作り続けてくれと頼んでいたからな。


ミミウは口の周りをべったりと汚した状態のまま、

もの凄い笑顔で俺が作った料理を見ている。


そうなんだよなぁ。

大変なんだけど、ミミウがこんなに喜んでくれるから作っちゃうんだよな。


「マルコイさん!これかぶりついていいやつですか?」


「ああ!ミミウのために焼いたやつだ。存分に食べていいぞ。」


「うわぁー!やったですぅ!」


ミミウはそのままお肉に向かって顔から飛び込んで食べ始めた。


おいおい‥

そんな食べ方で物が食べれるはずが‥


俺の目の前で鳥が骨だけになった‥


あるぇ?


人ってそんな風に物を食べれるんだっけ?


ミミウは次々とコカトリスを骨にしていく。


やばい確実に足りない‥


俺はまたしても調理にとりかかるのだった‥






ミミウの底なし胃袋は相変わらずだったが、少し落ち着いたのか食べるペースがゆっくりとなってきた。


俺はお城の料理人のたちが、興味深そうに俺が作っている料理を見ていたため、その人たちに教えながら作る事にした。


この料理を他の人が作れるようになれば、もしミミウのコカトリス欲が復活しても俺が少し楽できるかなと‥


「ちょっとさっぱりしたのも食べたいので、中に行ってくるですぅ!」


ミミウはそう言い残し城の中に入って行った。


え?


あ、そうですね。

もちろんお腹いっぱいになったとかじゃないんですよね‥


すまない、調理人の人たち‥

君たちにも過酷な試練を味わってもらう事になりそうだ‥





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