第721話
北京コカトリスの作り方を、城の調理人さんたちに伝えて作り続けてもらう。
これで急にミミウがコカトリス欲を発動させたとしても大丈夫だろ。
何匹か乾燥まで仕上げてきたので、揚げるだけなら調理人のひとたちでも大丈夫なはずだ。
しかしトールルズも揚げるって工程がなかったから、みんなしきりに感心してたな。
ん?
でもだとしたら、今から宴の会場に出ている料理は味のレパートリーが少ないだろうな‥
ちょっと覗いてみるか‥
会場に入ると中は賑わいを見せていた。
あれ?
思っていたよりもテーブルに人が集まっている。
俺が出した料理はミミウが食べてしまったみたいなので、もともとの料理しか残っていないはずだけど‥
やっぱり食べ慣れている料理も人気があるって事なのかな‥?
しかしよく見てみると、会場にいる人たちが食べている料理が見慣れた料理ではない事に気づく。
「ほほう。これは美味しいですな。」「この濃い味付けが何ともたまりませんな。」
会場にいる人たちが口々に料理を褒めている。
しかし濃い味付け‥?
俺が会場で見た料理でそんな物はなかった気がするんだけど‥
「はい!次の料理は麻婆豆腐です!」
あやめが両手に大きな皿を持って厨房からやってきた。
麻婆豆腐?
確か異世界の料理だったよな‥
もしかして誰かが作っているのか?
「恵ちゃんがね、キリーエに料理を教えるついでに作ってるみたいなんだ。口で説明するよりも、実際目にしてもらったほうがわかりやすいってね。」
俺が会場に入ってきた事に気づいたアキーエがそう教えてくれた。
なるほどね。
だとしたら会場が盛り上がっている理由がわかる。
異世界で料理好きだった、恵の作る物は美味しいだろう‥
しかしなぁ。
自分も作っておきながらアレだが、厨房の調理の人たちの様子が気になる。
やはり自分たちの知らない料理を作っている恵に対して尊敬の眼差しで見ている人もいれば、自分たちが頑張って作った料理が手をつけられていない事に対して唇を噛み締めている人もいる。
そうだな、彼らも自分たちの料理に矜持を持っているはずだ。
ポッと出の俺たちが作った料理がもてはやされていたらいい気はしないだろうな‥
う〜ん、何かお城の調理の人たちのプライドを傷つけずに食べてもらう方法はないだろうか‥
あっ!
そうだった。
こんな時のために俺の『スペース』には秘密道具が入っているのだった。
じゃーん!
『万能調味料タルタルソース』!
これがあればお城の調理の人たちが作った料理に少し付け足すだけで美味しくなるはずだ。
よし!
そうと決まれば早速試しに行ってみよう!
「はぁ‥なんでそう自分から頭を悩ます種を作るかなぁ‥」
アキーエは箱を抱えて駆け出すマルコイを見ながら呟いていた‥
お城の調理人さんが作った料理を確認する。
先程北京コカトリスの調理工程を説明したときも揚げるって工程を説明した時に驚いてたが、並んでいる料理は焼く、蒸す、煮るなどの料理だけだ。
それに調味料も塩が基本で塩辛い料理が多い。
たまに砂糖を使っている料理もあるようだけど、お肉を砂糖で漬けた物を焼いているようだ。
これって美味しいのか‥?
ちょっと怖くて食べれないな‥
砂糖自体高価だから、こんな料理を食べた事ないのだが、砂糖の無駄遣いだし調理の人も美味しいって思って出してるのだろうか‥?
そんな料理の中で薄味の料理を探し出す。
箱を開けて中に入っているタルタルソースを取り出して、上からかけてみる。
うん。
ただお肉を焼いただけの料理だけど、タルタルソースをかけるだけで味が全然かわるな。
今まで主に塩味で料理を食べていた人たちには、酸味のある料理は新鮮だと思う。
さて、誰かに食べてもらって感想を言ってもらわないと、食べるのに躊躇するよな‥?
皿を持って移動しようとすると、皿が動かない。
皿の方を見てみると、ミミウが皿の料理にかぶりついていた‥
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