第708話

恐る恐る手で掴んでいるものを見てみる。


手から伝わってくるピクピクとした振動。


ちっ!

残念‥じゃなかった、よかった生きてるようだ。


爆発の煙が晴れてきたので確認してみると、ロメントはダメージを受けて気絶しているようだが生きてはいるようだ。


何でだろう‥?


おそらく俺の手に掴まれていた事で、爆発の衝撃が光の膜で防がれてロメントに直接届かなかったんだろう。


あとは変態だからかな。


「すまないラケッツさん。不幸な事故で負傷してしまったようだ。ポーションを渡しておくから、俺が見えなくなってから振りかけてやってほしい。」


俺はラケッツさんにポーションとロメントを投げて渡した。


「え?え?いいんですか?」


「ああ。そいつは変わってるから大丈夫だ。ポーションをかけて復活したら、俺は神聖国にでも帰ったと言っておいてくれ。」


「わ、わかりました。」


しかし本当に爆発するとは思わなかった。

でもエンチャント:守護する者で防げるとわかったのは発見だ。

今回はギリギリだったので危なかったけど、少し魔力に余裕があるときなら何とか使えるかもしれないな。

でもアキーエが言った通り怪我すると危ないから、何か別の魔力を回復させる方法を考えておこう。


犠牲者がロメントだけでよかったよ。



とりあえずロメントが静かになっている間にクワイスを探す。


デッカイから降りたクワイスは傭兵団に指示を出していた。


「クワイス。被害はどうだ?」


「ああ、マルコイさん。魔族と戦った光剣隊に多少被害が出ているようだ。他は怪我程度だな。」


光剣隊に被害か‥


光剣隊は光剣を装備させてはいたが、それ以外の魔道具を装備させているわけじゃなかったからな。


複数人で戦うように指示は出したが、魔族の能力の高さの方が上だったという事か‥


「心配するなマルコイさん。重傷を負ったやつはいるが、死人はいない。危ないと判断したやつは多脚魔道具を装着しているやつが早々に回収していたからな。」


「でもそうなると他の人に負担がかかったんじゃないのか?」


「魔族を複数人で相手していた者は、1人が回収された時点で撤収させたよ。その後の相手は倒せないけど阿修羅部隊にさせたから。」


なるほど。


そうなるとラケッツさんがアシュラ君を使って光剣で戦っていたが、それを主部隊に使わせた方がいいかもしれない。


アシュラ君では光剣に魔力を流す事ができないので、その辺は改善が必要だ。


ラケッツさんがやらかした事だけど、次に活かせる失態だったという事か‥


やっぱり魔道具の勇者は一味違うぜ!


「それじゃあ落ち着いたら拠点に戻る準備をしてもらっていいよ。報酬は神聖国からがっぽりいただくから期待しといてくれ。」


「ああ、楽しみにしている。でも神聖国も変わったばかりで色々と物入りだろう?あんまり無理させなくていいから。」


「それはそうだと思うけど‥いいのか?」


「今回の戦いは神聖国の問題だけじゃなかったからな。この戦い負けていたら魔王の爪痕がくっきりと残る羽目になるところだった。それを防げたんだ、今後の事を考えるとそれだけで報酬だよ。」


おお‥クワイス‥

カッコいいぞ。

いつも大口開けて間抜け顔してるけど、そんなかっこいい一面も持っていたんだな。


そういえば、あやめがカッコいいとか言ってるんだっけ?

これならわかる気がする‥


「うちも高額な報酬はいらないわよ。」


突然スネタさんが会話に入ってきた。


「生まれ変わろうとしている国からお金を巻き上げる事はできないわ。そうね‥‥報酬の代わりに数人若い男性を傭兵団に出向させてもらうと助かるわ。」


「出向?」


「ええ。うちも戦い続きで何人か団員が引退しちゃって。次が見つかるまででいいんだけど、素人じゃ困るし。」


なるほどな。

確かに戦闘経験のある兵士だと助かるってところか。


「マルコイ信じるな‥こいつはあわよくば結婚相手を見つけるつもりなだけだ。」


「エルエス‥?」


スネタさんとエルエス兄さんは追いかけっこを始めた。


スネタさん‥

相変わらずブレないなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る