第705話
転移を使用する魔力がまだ少し足りないな。
魔力供給の腕輪から流れてくる魔力が少なくなって来たのが原因か?
俺は腕につけていた魔力供給の腕輪を外して『スペース』に戻す。
そして予備の魔力供給をつける。
そのまま魔力を供給しようとすると‥
アキーエに腕を掴まれた。
「マルコイ?何しようとしてるの?」
「え?」
アキーエの笑顔が怖い‥
そうだった。
アキーエには魔力供給使うなって言われてたんだった‥
「いや、ちょっと緊急事態だったもんで‥アキーエが窮地に陥ってると思ったら居ても立っても居られなくなってさ。」
「はぁ‥」
アキーエは深いため息をつく。
「ありがとうマルコイ。自分の危険を顧みずにわたしの所に来てくれて。でも‥それでマルコイが怪我したら危ないじゃない。」
「そうだな。でもアキーエがピンチの時はまた使うと思うぞ。」
「もう!マルコイったら‥」
自分が傷つくのは構わない。
でも仲間が、アキーエが傷つくのは耐えられない。
2人でモジモジする。
「はいはいはいはい!もおええよ。火傷しそうや。マルコイさん結局戻るための魔力を回復するのにどれくらいかかるん?」
おっと‥
周りに人がいるんだった。
「結構距離があるからな。下手したら半日は使えないだろうな‥」
魔力はほとんど空になっている。
魔力量も多いし回復量も多いが、それでもかなりの時間がかかりそうだ。
「はいはい。わたしに任せて。マルコイの魔力は変わってるから交換率は悪いと思うけど、わたしの魔力をほとんど注げば多少足しにはなるでしょ。」
わたしの魔力?
アキーエは俺の手をとって自分の胸元に持っていく。
おいおい。
そ、そんないっぱい人がいる前で恥ずかし‥
ふわりとした暖かい物が流れ込んでくる。
「これは‥?」
「わたしの魔力をマルコイに渡してるの。さっき言った通りマルコイの魔力は変わってるから全部マルコイの魔力にはならないけど、多分渡した魔力の2割くらいはマルコイのものになるんじゃない?」
確かにさっきまで魔力不足で悪かった気分が、かなりマシになってきている。
「アキーエこんな事もできるようになったのか?」
「マルコイがその腕輪を使ってるのを知ってから練習したの。魔力色が近い人の方が交換率がいいみたいだけどね。」
「そうなのか‥ありがとう。」
「いいわよ。ミミウにマルコイの魔力色を事を聞いてから色々やってみたんだけど、やっぱりマルコイには上手く渡せなかったわね。魔力色が正反対のアレカンドロでさえ4割くらいは渡せたんだけど‥」
アキーエ‥
何ていい女なんでしょ。
絶対魔王にはやりません。
アキーエ、おれのよめ。
「これ以上渡すとわたしが魔力不足で倒れそうだから、これが精一杯かな。」
アキーエのおかげでもう少しで転移できる程度の魔力は回復した。
「ありがとうアキーエ。もう少ししたら転移出来そうだ。魔力が溜まったら向こうに行ってくる。」
何事もなければ向こうはもう片付いてそうだけどな。
「ところでここにいる理由は何となく想像がつくけど、全員で来てるのか?」
多分獣人国にいる時にトールルズが攻められてるって情報が入ったんだろう。
それでイザベラさんあたりに招集されたんじゃないだろうか?
「みんないるわよ。ミミウとリルはあそこ。」
アキーエが指差す方を見ると、少し離れたところでミミウとリルがモンスターと戦っていた。
何か2人で戦っているというか、ミミウが指示を出してリルが倒してるって感じなんだが‥
あ、ミミウが指差した方に向かってリルが駆け出した。
モンスターを一刀で斬り伏せる。
そしてまたミミウが指示を出してリルが走り出す。
何をやってんだあれは‥?
するとリルが倒したモンスターにミミウが近づき、何かを確かめると誰かを呼んでいる。
するとキリーエが突然現れて、モンスターが突然消えた。
いろいろと言いたい事があるけど‥
あるぇ‥?
キリーエさっきまでここにいなかったっけ?
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