第704話
「マルコイさん‥」
正人たちが駆け寄って来た。
「なんでマルコイさんがここにいるのかとか、この一帯だけタルタルソースが飛び散ってたりとか、どんな戦い方したらこれだけ地面にクレーターができるのかとか聞きたい事はたくさんあるんだけど、その魔族は何者なんだ?」
卓が声をかけて来た。
正人や恵なんかは青白い顔をして口をつぐんでいる。
まあ、さっきあれだけ強烈な殺気を当てられたらそうなるよな。
「その魔族が何者かは知らんが、さっきまでその魔族の中にいたのは魔王らしいぞ。」
俺がそう告げると、卓の顔が引き攣った。
「道理で‥しかし魔族の中にいたと言うのは?」
「どうやら魔王は他人の身体に精神をうつせるらしい。俺の【アバター】と同じようなスキルだが、【アバター】とは違い対象者に触れてなくてもうつせるみたいだな。そうだろアキーエ?」
「うん。その魔族と戦ってたら、急に入れ替わったの。そして魔王ジェズアルドだって名乗ったわ。」
アキーエはこちらに小走りで駆け寄りながらそう告げる。
なかなかアホっぽい奴だと思っていたんだがな。
それにもしあいつが魔王じゃなかったら、実験台‥ゲフンゲフン‥いい友人になれたかもしれないとも思ったくらいだし。
「なるほど。だとしたらいつ魔王が近くに現れるかわからないって事か‥」
「いやそれはないんじゃないか?精神をうつせるのは血縁者だけだって言ってたからな。ただ魔族なら目でわかるが、もし混血だったりするとわかりにくいかもしれないな。」
「混血?」
「ああ。あいつはアキーエに求婚してやがった。もし魔族と多種族で子供が出来るのであればってところだがな。」
「なんだって?アキーエさんに求婚してただって?なんて命知らずだ‥」
「卓さん‥どういう意味ですか?」
アキーエがニコニコしながら卓に近づく。
おお‥
殺気がさっきの魔王より凄まじいのだが‥
「ヒィッ‥ち、違いますって!ア、アキーエさんに手を出そうとするなんてマルコイさんが黙ってないなと思って!」
「なんだ。そういう事ね。」
卓は明らかに安堵した表情をしている。
多分口が滑ったんだろうな‥
「そうだな。本体に会ったら、そんなふざけた事を言えないように徹底的に叩き潰してやる。」
「もう!マルコイったら!」
アキーエが可愛く俺の肩を叩く。
うんうん。
アキーエは可愛いなぁ。
これで俺の肩が叩かれた衝撃で外れてなかったら完璧なんだけどなぁ‥
「とりあえず魔王は撤退したみたいだから、後処理を頼む。終わったらあの街で待っててくれ。」
俺はエンチャント:慈愛ある者を使い肩を入れながら皆んなに伝える。
「え?プリカで?も、もう終わったんだから、い、家でいいんじゃない?」
珍しくアキーエが焦ってるな。
何かしでかしたのかな?
「アキーエ殿!気にしすぎですぞ!自分たちは街を守ったんですから、城壁のひとつや‥」
「アレカンドロ!その事は後で話しましょう!」
アキーエは、歩いて来たアレカンドロの言葉を遮るように言葉を被せた。
いや、もう聞こえてますけど‥
アキーエの事だから、また魔法か何かで城壁を吹っ飛ばしたんだろうな‥
まあいつもの事だから気にしなくていいのに。
城壁や城のひとつやふたつ、アキーエさんならぶっ壊しかねないからな。
あとなんでアレカンドロはあんなに血塗れなんだろう‥
おそらく張り切って戦ったんだろうなぁ。
何となくだが、笑顔で斧を振り回しているアレカンドロが想像できる‥
こっちはほとんどケリがついたようだな。
かなりの数のモンスターがいたようだが、今はほとんどのモンスターが倒されているようだ。
戦後の処理については、あの街の代表とかと話すことになると思うけど、キリーエもいるだろうから何とかなるだろ。
「すまないが、俺は一旦向こうに戻る。」
「向こうは大丈夫なん?」
おう!
いつの間にかキリーエが背後にいた!
気配なく近寄るのは心臓に悪いからやめてほしいです‥
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