第698話
表情は真剣そのものだが、その攻撃は先程までとあまり変わりがない。
ただ今度は足を使い、間合いを調整しながら攻撃してきている。
今の魔王の攻撃であれば動作一つ一つが見えている。
躱すのは問題ないし、それほど脅威ではない。
さっさと倒さないとまた変な事言い出しそうだから、次は魔気を放った後に魔法を使って攻撃してみよう。
魔王がこちらの顔めがけて拳を放ってくる。
つ、番いになれとか言っておきながら、顔を殴ろうなんてとんでもない奴ね。
強い人って言ってたから、顔なんてどうでもいいのかしら?
それはそれで何かムカつくわね‥
魔王の拳を避けて反撃しようとするが、突然嫌な感じがした。
首の後ろあたりがざわざわする。
いつもより大きく攻撃を避けるべき?
反撃する事ができなくなるけど、今は勘を信じたほうがよさそうだ。
迫ってきた魔王の攻撃を少し大袈裟なくらい大きく動いて避けた。
しかしそれだけ大きく避けたにもかかわらず、首の辺りに痛みを感じた。
そして何かを引きちぎられるような鈍い音がする。
「ほう!これも避けるか!さすがだ!」
魔王を見ると攻撃してきた腕の後ろからもう1本腕が生えており、2本になっていた。
なるほど。
その腕で攻撃してきたわけね。
確かにそれだと間合いを読み違えるわ‥
「ふむ。これはなんだ?」
魔王がそう言いながら、指先に引っかかっているものを外す。
見覚えがある‥
あれはマルコイにもらったペンダントだ‥
慌てて首元を触るが、いつもあった感触がない。
「返しなさいよ!」
「ふむ。大事な物のようだな‥もしかして今の番いから貰ったものか?」
魔王はペンダントを見ながら言う。
「そ、そんなんじゃないわよ!いいから返しなさいよ!」
「そうはいかん。前の番いに貰ったものなど破棄しようではないか。」
魔王はペンダントを握りしめて力を入れる。
「むっ。何だこれは魔道具か?恐ろしく固いな。仕方ない。」
魔王は手のひらに魔力を集め始める。
「や、やめなさい!」
わたしは魔王に向かって飛びかかろうとするが、その前に魔王が魔力を放つのが早かった。
魔王の魔力を受けてペンダントにヒビが入る。
せ、せっかくマルコイに貰ったアクセサリーなのに‥
絶対に許さない!
魔気を練り、魔王に駆け出そうとすると魔王とわたしの間の空間が歪む。
そしてそれは人影になり、わたしが会いたかった人に変わる。
「マルコイ!」
凄く会いたかったけど、とりあえず魔王をぶっ飛ばして喋れなくしてから来てほしかったわ‥
アキーエが攻撃されていると思って来たが、どうやら様子がおかしいな。
魔族の男がアキーエに渡したペンダントを持っている。
どうやらアイツにペンダントを奪われて、直接ペンダントを攻撃されたようだな。
しかしアキーエが無事でよかった。
それを確認出来ただけでも、此処に来た甲斐はあったというものだ。
「ほう‥転移か。面白いスキルを持っているようだな。そしてペンダントを壊したと同時に現れたということは、このペンダントを渡したのはお前か‥ならばお前をここで倒せば、その女が俺と番いになる事ができるということか。」
「だから何を言ってるのよあんたは!気にしないでねマルコイ!こいつが勝手に言ってるだけだからね。」
ふ〜ん。
何かよくわからないけど、こいつがアキーエと敵対していた魔族か‥‥‥‥
は?
今何ていったコイツ?
アキーエがなぜここにいるのか、魔族と敵対している事や他の仲間の事など気になることはたくさんある。
たくさんあるが‥俺と番い‥‥だと?
「何を言ってるんだお前?」
俺は魔族の男に問いかける。
「ふん。聞こえなかったのか?この女と番いになるのにお前は邪魔だと言ったんだ。」
なるほど。
いろいろとわからない事があるが1つだけはっきりとわかった事がある。
お前は死にたいようだな!
「とりあえずぶっ殺す!」
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