第696話
魔力も残り少ないが、俺が加勢すればラケッツさんたちも勝利する事が出来そうだ。
そう思い光剣を手に歩き出そうとした時に急に魔力の流れを感じた。
これは‥?
アキーエに渡しているペンダントか?
以前から渡していた物で、効果としてはアキーエが大きなダメージを受けた時に肩代わりをし、受信器を持つ俺がわかるようにしている物である。
アキーエが大きなダメージを受けるような戦いをしている‥?
家に誰もいなかったのはそういう事か!?
「エルエス兄さん!アキーエたちの身に何か起こっているようだ!すまないがここを任せる!」
「アキーエの身に?わかった!こっちは大丈夫だ!後は俺たちだけで何とかなる!もしイレギュラーな事があったとしてもお前が戻ってくるまでは持ち堪えてみせる!早く行ってやれ!」
「任せた!」
俺はアキーエのペンダントの位置を探す。
獣人国よりも更に遠い‥?
もしかしてトールルズか!?
すぐにアキーエの元に向かう為に転移を使用する。
すると魔力を練った時点で眩暈と頭痛が起きる。
くそっ!
距離が遠くて魔力が足りないのか?
俺はすぐに魔力供給の腕輪を使用する。
爆発する?
そんな事起こるはずないだろ。
女神様が俺の味方してくれてるんだ。
七色に光る女神様がな。
うっ‥
あとチラッと頭に神聖国にある御神体がよぎってしまった。
自分に祈ってどうするんだっての。
まあこの際、タルタル神の神通力も信じてみるか。
待ってろよアキーエ!
すぐに助けに行くからな!
腕輪から魔力が流れ込む。
どうにか爆発せずに済みそうかな。
もし爆発したら、もう片方の腕につけて供給するとこだった。
転移分の魔力が回復したと同時にアキーエのペンダントに向かって転移を行う。
このまま供給し続けて、エンチャント一回分でいいから回復させないと。
すぐに視界が切り替わる。
目の前には真っ赤な眼をしたアキーエが‥
あれ?
アキーエじゃないんだが‥
転移した先には真っ赤な眼をした、魔族の男が立っていた。
アキーエに渡したはずのペンダントを持って。
「マルコイ!」
すると少し離れた所からアキーエの声が聞こえた。
振り返って見るとアキーエが少し困ったような顔をしてこちらを見ていた‥
デュワインの姿をした魔王はどうしてもわたしと戦いたいみたいね‥
勇者勇者言ってるんだから、そっちの方が優先じゃないかと思うんだけど、こんな危ない奴を正人さんたちのところに向かわせるわけにもいかないしね。
「それではそろそろいいか?この身体ではお前の相手を満足に出来んかもしれんがな。」
「別に諦めて帰ってもらってもいいわよ。無理して戦わなくてもいいんだから。」
今はプリカの城壁の事が心配だし‥
「そうはいかん。こんな楽しい事をほったらかして戻るなんて出来んぞ!」
魔王は顔に笑顔を貼り付けて迫ってくる。
悪いけど不気味だわ。
脳筋にも困ったものよね‥
「魔法が得意そうだが、接近戦はどうだ?すまないが俺はどちらかというと殴り合いの方が好きでな。悪いが付き合ってもらうぞ!」
デュワインと同じ身体なのか疑わしくなるようなスピードでこちらに向かってくる魔王。
「ははっ!魔法使いは懐に入られると何も出来まい?」
魔王は低い姿勢からこちらの胸元に拳を突き出してくる。
拳の軌道を手の甲で逸らし身体を反転させて魔王の背後に移動する。
「なにっ!?」
魔王が振り向いたところに腹部へ攻撃を放つ。
もちろん気と魔力をたっぷりと乗せた拳だ。
「魔法使い風情の攻撃など俺に通用‥ふげっ!」
腹部に拳が突き刺さり、悶絶する魔王。
わたしの攻撃は力じゃなくて気と魔力を融合させた爆殺拳だから。
オーガも倒せる拳をまともに受けて立ってられるはずがないわよ。
魔王は膝から崩れ落ちた。
「お、お前魔法使いじゃないのか?」
「残念ね。わたしは魔闘士よ。」
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