第695話

ビアルポが投げた短剣は俺の上空から降ってきている。


それに合わせるようにビアルポ本人も俺の方に駆けてきた。


俺は地面に手をつき、スキル【スードウクリエイター】を発動させる。


俺の背後から俺の上空を覆うように土が盛り上がる。


「な、なんだと!」


ビアルポが投げた短剣は全て土の壁に突き刺さる。


ハーフェルのスキルの時は貫通してきそうだったから使わなかったけど、短剣程度ならこれで充分だ。


スキルレベルが上がって発動までの時間がかなり早くなったからな。


直線的にこちらに飛んでくるならまだしも、上から降ってくる短剣に対しては余裕で間に合うぞ。


俺は短剣を回避して迫ってくるビアルポに意識を向ける。


短剣は防いだ。

だがビアルポは覚悟を決めたのか短剣を抱えて俺に突っ込んでくる。


その覚悟は認めよう。

魔王のため、ハーフェルのためにってところか。


だがだからと言って討たれるわけにはいかないんだよ。


俺はエンチャント:勇敢なる者を発動する。


ビアルポの短剣を躱して、その腕を掴む。


そしてビアルポの身体を腰に乗せるような形でそのまま前に突き落とす。


地面に叩きつけられたビアルポは苦悶の表情を浮かべるが、そのまま転がるように俺から離れようとする。


俺はそのまま追撃し、ビアルポが膝をついたところで光剣を振り下ろす。


肩口から斜めに斬撃が入る。


上位魔族であろうと、光剣で斬った傷だ。


斬った深さから致命傷だろう。


「がはっ!や、やはり届かなかったか‥し、しかし君は一体何者なんだ?スキルをいくつも持っているが、本当に勇者ではないのか?」


「そうだな。残念ながら、俺は勇者ではない。本物の勇者ならまだ獣人国にいて魔王を倒すために訓練していると思うぞ。」


「そうか‥全く恐ろしいな。女神の使徒である勇者でもない男に十魔がまったく歯が立たないとは‥」


「まあ勇者じゃないが、女神の使徒ってところはあってるぞ。」


「な、なんだと‥ま、まさか魔王様を倒すために女神は使徒をもう1人遣わせたと言うことか!何という事だ‥」


「さあな。俺は女神様から魔王を倒せとは言われていない。ただ何かしらの使命はあるようだけどな。だが魔王が他種族を排除しようとしている限り、魔王は俺の敵だ。」


俺の平和な実験生活を邪魔するやつは誰であろうと敵だ。


「そうか‥‥‥‥申し訳ありません魔王様、ハーフェル様。この様な危険な奴は何としても倒すべきだったのですが‥すみま‥‥せん‥」


ビアルポはそのまま息絶えた‥




しかし正人たちだったらヤバかったな‥


俺が戦う事になってよかった。


こんな奴がいるのなら、正人たちにはもっともっと強くなってもらわなければ‥


こうなったら思い切って、専用の魔道具作って装備させるかな‥


勇者だから何となくそのままにしてたけど、思い切って勇者改造計画‥‥勇者狂化計画‥‥‥勇者強化計画をするべきかもしれないな。




ラケッツさんたちに目を向けると、魔族との戦いが続いていた。


エルエス兄さんとスネタさんのコンビは流石だな。

スネタさんが近接戦闘を行って大槌で弾き飛ばしたところにエルエス兄さんの槍で攻撃している。


そして魔力の調整なのか爆発も他を巻き込まない程度にしている。

そんな事できるんだ‥

作った本人も知らないことをしてるんだけど‥


爆煙が消える前に、スネタさんがすぐに追撃している。


あのコンビって俺でもやられそうな気がするんだが‥



スキャンも優勢に戦っている。

時々ライリーが俺を睨んでいるのが気になるんだが‥

何か悪い事したかな?


うおっ!

短剣が飛んできた!


何か知らんがライリーには近寄らないようにしておこう‥




ラケッツさんは‥


アシュラ君で無双してた‥


アシュラ君が持った光剣で魔族を斬りまくってる。


光剣に魔力を流してないのでただの剣だし、魔族は斬られたそばから回復してるみたいだけど回復が追いついていない。


魔族も涙目だな。

上位魔族でなければ、この3組なら何とか戦えるみたいだな。

ラケッツさんに関しては上位魔族もいけるかも‥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る