第688話

「な、なによそれっ!」


ハーフェルが悲鳴に近いを上げる。


何よそれって言われても‥


俺の愛しの木偶人形たちです。

まあこんな形で使っちゃったけど。


それにまだまだあるぞ。


「あ、あんたは一体‥」


ハーフェルは今度は自分の前方にかなり大きな円錐の壁を作り出す。


それは木偶人形で防ぐのは大変だな。


「その気味の悪い人形と共に潰れろ!」


確かにこれは木偶人形を出したところで、人形ごと潰させるだろう。


しかしそれは木偶人形で受け止めれば、だ。


1つしかないのであれば避ける必要もない。


俺はエンチャント:守護する者を発動する。


飛来してきた円錐の柱は、俺に触れる前に俺の周りに漂っていた膜に当たり霧散した。


「な、なによそれ!なんで効かないのよっ!」


ふっ、エンチャント:守護する者の防御膜はこの程度の攻撃で破れはしない。


アキーエの魔法でさえ破れないのだ。

この程度の攻撃など恐るるに足らない。

アキーエの魔法より恐ろしい攻撃があるとは思えないので余裕である。


ハーフェルはその場から離れ宙に浮く。


お?

確かここに来た時も上から降ってきたけど、それ系のスキルを持ってるのか?


「な、なんなのよあんたは‥得体がしれない‥」


失礼な。


人を変態みたいに‥


「あんたは危険だわ。」


ハーフェルは魔力を練り上げる。


何か大きな技を使うつもりだな‥


俺は近くでラケッツさんと遊んで‥戦っていたロメントの首を右の上腕で刈り取る。


頭から倒れたロメントの足を両脇で挟み、そのままその場で回転する。


ハーフェルは準備が整ったのか、魔力を解放した。


そして俺を挟むような形で何本もの柱が出現する。


まるで大きな手のようにも見える。


ふん。

そんな事だろうと思ってたぜ。


俺は振り回していたロメントを回転の勢いをつけて、そのままハーフェルに向けて放り投げた。


「潰れて死ね!『魔柱葬送』ってうっそ!」


俺にスキルを使うつもりが目の前に飛んできたロメントに焦るハーフェル。


しかしすぐに自分の前に違う壁を出現させてロメントを弾き返す。


あらぬ方向に飛んでいくロメント。


すまん、洗脳されている自分を恨め。

洗脳されてなくても同じ事したかもしれないけど‥


ん?

ロメントが立ち上がってラケッツさんに向かって行った。

タフだなぁ、あいつ‥


仕方なく亡き者になってしまったと演出しているのに、元気に動き回ってやがる‥


「くっ!人を投げるなんてとんでもないわね‥いくら面識のない人だからといえ、思い切り投げるなんて‥」


「いや、知り合いだぞ。お前知らない人を投げるなんて、そんな酷い事できないぞ。」


「知ってる人を投げたんかいっ!」


いや、俺人見知りだから知らない人を投げるなんてできないよ。


俺の攻撃でハーフェルがスキルを使うのを躊躇した隙に、【時空魔法】で宙に足場を作りハーフェルに向かって駆け出す。


「なっ!あんたも空を飛べるの?」


今日は空飛んでる人がたくさんいますからね。

羽根人形をつけてる傭兵がそこら中飛んでるもんね。


「よいしょっと!」


俺はハーフェルを剣で斬りつける。


ハーフェルはすぐに自分の側に結界を展開して俺の攻撃を防ぐ。


しかし勢いを止めることが出来ずに地面に落とされる。


「なんなの一体。こいつが1番危険だわ!シームー、エルフこいつを倒すわよ!」


ロメントがハーフェルのそばに来る。


「シームー!シームー?どこにいるの!?」


さっきロメントを連れてきていた男が姿を消している。


「くそっ!一体なんなのよ!全く計画通りに行かない!いいわ、こうなったら今いる魔族全員で勇者と思えるあんたとさっきの奴だけは討ち取ってみせる!」


おう!

そうだった、そうだった。


「さっきからずっと勇者勇者言ってるけど、ここに勇者は来てないぞ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る