第687話

水の竜虎がラケッツさんを襲う。


水虎が直線的に攻め、避けたところを曲線的に攻める水竜が襲いかかる。


ラケッツさんは多脚君で水虎を避け、水竜をアシュラ君が捌こうとする。


しかし水竜はアシュラ君の腕で弾かれるがすぐにその形を取り戻し、またラケッツさんに襲いかかる。


ラケッツさんはその事に驚いたが、すぐにその機動力を活かし距離を取る。


だが距離を取ったラケッツさんに今度は水虎が飛びかかる。


「はっはぁ!やるな!楽しくなってきたぞ!」


う〜ん、動物との鬼ごっこだな。

楽しそうでなによりだ。

俺だったら嫌だけど‥


ロメントの精霊魔法は、一定以上の威力を持つ攻撃でなければ破壊できない。


多少の攻撃では術者の魔力ですぐにその形を戻すのだ。


水虎の攻撃を避けようとするラケッツさんだが、今度はハーフェルの壁が襲いかかる。


辛うじて避けたが、背後に壁が刺さり逃げ場を失ったラケッツさんに水の竜虎が襲いかかる。


あ、やべ。

見学してる場合じゃなかった。


俺はエンチャント『勇敢なる者』を発動して駆け出す。


そしてそれほど離れていなかったロメントに向かって勢いをつけたまま飛ぶ。


そして両足を揃えて、ロメントの顔めがけて蹴りを放つ。


「ぐぼっお!」


ふむ、直撃だ。

ロメントはもの凄い勢いで転がっていった。


ラケッツさんに襲い掛かっていた水の竜虎は術者の異変により動きを止める。


その間にラケッツさんは壁を迂回して距離を取る。


うむ。

我ながらナイスキックだ。


「ぐ、ぐが‥」


ロメントがふらふらしながら立ち上がる。


「おいロメント!Sランク冒険者ともあろう者が情けないぞ!気合いで正気を取り戻せ!」


無理だと思って言ってます。

だってあのリルでさえ洗脳されたんだし。

ロメントがリルに勝ってるところといえば、変態なところくらいだろうか‥

勝ってると言わないかもしれないけど‥


「ぐっ!が、がぁ!」


するとロメントは頭を抱えて悶え出した。


おや?

もしかして効いてる?


しかしそう思ったのも束の間で、またすぐに光を持たない目に戻った。


残念。


上空に気配を感じ、後ろに飛び退く。


すると先程まで立っていた場所に先の尖った半透明の壁が突き刺さる。


「黒い男!ここにいたのね!好都合よ!あんたも一緒にここで殺してやるわっ!」


おおう!

色っぽいお姉さんが目が真っ赤になるくらい怒ってる!?


あ、そうだった魔族だから元から真っ赤だった。


なんでそんなに俺に対して怒ってんのよ?


俺お姉さんに何かした覚えないんだけど‥?


「あんたは何者なの!私はアフアーブと違って油断なんか絶対にしない!息の根止めてやるわ!」


ハーフェルは自分の周りに結界を展開させる。


そして結界は幾つもの細い槍のように分かれてその場で横回転している。


おいおい。

あんなもん放たれたらたまったもんじゃないぞ。


どうする?


エンチャント:守護する者を使ったとしても一発しか無効化できないもんな。


エンチャント:穿つ者を発動して同じ数の魔法で迎撃するかな‥


でもあれって元は結界だよな?

だとしたら魔法弾かれたら詰むような気がするぞ‥


「喰らえっ!『結界邪尖』!」


やべっ!


次々と迫ってくる尖った壁。


ふむ。

やっぱりこれしかないよなぁ。

すまない、後でちゃんと供養してやるからな。


「いでよ!我が子供たちよ!我の変わりに敵を討つのだ!」


俺は魔王のような台詞を吐いて『スペース』から木偶人形たちを召喚する。


木偶人形たちは1体では壁を止める事はできないが、2体、3体とぶつかると勢いがなくなっていく。


ふあっはっはっは!


残念だったな。

俺の『スペース』の中には失敗作や不良品なども合わせると何千という木偶人形が入っているのだよ!


はっはっは!

普通に捨てようと思ったらアキーエに「怖いからやめろ」と怒られたから、それ以来『スペース』に入れるようにしていたからな!


壁は数百の木偶人形を破壊して、その活動を止めるのだった‥

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る