第686話
ハーフェルの攻撃を華麗に躱すラケッツさん。
「ふん!この程度じゃ俺を捕まえる事なんて出来ないぜ!」
上空から迫ってくる長方体の壁を多脚君のスピードで躱し、ハーフェルに迫るラケッツさん。
いや、ラケッツさん‥
貴方魔族を攻撃できる魔道具持ってないでしょ。
光属性の爆弾もさっきの魔族相手に使ったから何も持ってないはずだよね。
俺は『スペース』から光属性の剣を取り出し、ラケッツさんに向かって投げる。
「ラケッツさん!その剣を使うんだ。」
俺は傭兵さんの影に隠れながら武器を投げ渡す。
「おう!誰か知らないが助かるぜ!」
そう言って地面に刺さった剣をアシュラ君の手を使い拾う。
そしてそのまま‥
アシュラ君の手に握った剣で攻撃を始めた。
ラ、ラケッツさん‥
アシュラ君では光剣使えないよ‥
アシュラ君はただの剣となった光剣でハーフェルを攻撃する。
ハーフェルは自分の前に壁を作り出して攻撃を捌く。
「ちっ!厄介なやつね。」
壁に阻まれたラケッツさんはその場を離れる。
するとそのラケッツさんめがけて、青い物体が飛びかかる。
アシュラ君が反応して防御するが、衝撃が強く吹き飛ばされる。
ラケッツさんはすぐに体勢を整えて自分を攻撃してきたものを確認する。
それは水を象った竜だった。
あれは精霊魔法‥?
すると先程ハーフェルと話をしていた魔族が1人のエルフを連れていた。
「『不動たる水の精霊よ。僕の剣となり敵を屠れ!水虎顕現!』」
そしてそのエルフの近くに水で象られた虎が現れる。
水虎は水竜と共にラケッツさんを囲むように位置取る。
「ふふふ。勇者と言っても強いのは魔族相手だけでしょ。相手がエルフだったらどうなるのかしら?こいつはエルフでもかなりの力を持った元冒険者よ。あなたで相手が務まるかしら?さあやってしまいなさい!」
そして細剣を持ったエルフがラケッツさんめがけて駆け出す。
そしてその後ろでハーフェルは壁を設置してラケッツさんの隙を窺う。
「ふははは!よかろう!俺が魔族もエルフも相手してやる!」
そう言ってラケッツさんは2人と相対した。
「ロメント何やってんのぉ!」
俺は思わず大きな声を出してしまった。
今出てきたエルフに見覚えがあったからだ。
名前はロメント。
エルフ族でSランクの変態冒険者だ。
そして俺が闘技会で戦った相手でもある。
自国に用があるとか言って帰ってたけど、何をどうしたら魔族と共闘する事になるんだよ。
男でも女でも好きになる奴だったが、俺を好きになると言う筋金入りの変な奴だった。
いや、変な奴というよりも元からの性格もあって変態だった。
出来れば会いたくないと思っていたけど、まさかこんな所でこんな形で会うとは思ってもいなかった‥
でも変態は変態だったけど、魔族に味方するようなやつじゃなかったと思うんだけど。
俺の思わず出てしまった声にも反応を示さない。
昔のあいつだったら声に反応しそうなものだが‥
まさか‥
俺はロメントの顔が見えるように場所を移動する。
顔の表情がおかしい。
敵と認識したラケッツさんを見ているんだろうけど、どこか焦点が合ってない感じだ。
そうか洗脳されているのか‥
さてどうするか‥
光属性を使えばロメントの洗脳も解けるかもしれない‥
でも洗脳解いたら、変態が戻ってくる‥
難しい問題だ‥
いっその事魔族もロメントさんもまとめてぶっ飛ばしてはいけないだろうか‥
必要に駆られてとか何か理由をつければいけるか‥?
ここならロメントさんの事を知ってる人がいないかもしれないからワンチャンないだろうか‥
「あ、あれはSランク冒険者のロメントじゃないのか!」
神聖国兵の中からそんな声が上がる。
くそっ!
余計な事を!
ちっ!
さすがSランク冒険者。
こっちでも顔を知られていたか‥
仕方ない。
ちょっと助けるとしましょうかね‥
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