第685話
「ちょ、ちょっとマルコイさん助けてください!」
迫り来るハーフェルの攻撃をアシュラ君が化勁のような最小限の動きで軌道を逸らして躱していく。
ア、アシュラ君ってあんな動きもできたんだ‥
ラケッツさんは情けない事を言っているが、アシュラ君は装着者の意思とは関係なく戦いを続けている。
ラケッツさんもスイッチが入ればいいんだろうけど‥
どうしたらいいのかな‥?
「ラケッツさん!相手が魔族だからって過度に構えすぎです!ラケッツさんはさっき魔族を倒したんですよ!魔道具の力を信じれば、その魔族にもきっと勝てます!」
とか適当な事を他の傭兵の人の影に隠れながら言ってみる。
「そ、そうかな‥た、確かにさっきの魔族とも戦えたし‥」
「そうだ!そのアシュラ君に、ラケッツさんが意識して羽根人形や多脚君を使えば、魔族だろうと敵じゃないぞ!」
嘘ではない。
今のところ上位魔族相手でも戦えている。
今のところ‥ではあるが‥
ハーフェルは攻撃を受け流されるのを嫌ってか、今度は左右から挟むような形で壁を使ってきた。
しかしあの動かせる結界は便利だなぁ‥
どうにかして模倣できないもんかな。
魔族のスキルは鑑定で見る事はできるけど、ギルドカードがないから模倣できないんだよね。
今鑑定したらハーフェルに気づかれそうだからやらないけど‥
今度女神像のところに行った時にでも改善できないか頼んでみよう。
料理たくさん持っていったらやってくれそうな気がしなくもないんだけど。
さすがにアシュラ君でもあれを喰らったら負けだな。
ラケッツさんが挟まれる前に助けに‥
「とうっ!」
ラケッツさんが掛け声と共に上空に跳ねた‥
多脚君の力で空に舞い上がり、羽根人形を使い華麗に地面に着地した。
「確かに!さっきの魔族に勝てたのもたまたまではないはず!この魔道具さえあれば俺は最強のはずだしな!」
おお!
ここに来てラケッツさんのスイッチが入ったぞ!
これは期待できる!
「へぇ。あれも躱すの‥ただ強いだけじゃなかったみたいね。状況判断もできる。それにさっきよりスピードも増した。やはり勇者はレベル差があったしても魔族限定ではあるが、そのレベル差を無くして戦う事ができる‥やっぱり本当だったのね。」
いや、早くなったのは多脚君使っただけなんだが‥
「やはり対勇者の切り札をださなきゃいけないようね‥シームー準備はいいかしら?」
いつの間にか近づいてきていた魔族の男にハーフェルが声をかける。
「ああ。今度は時間もあったから調整も完璧だ。前回のように途中で動かなくなるような事はないぞ。しかしあいつが勇者なのは確かなのか?」
「これだけ私の攻撃を躱せるのよ。あいつが勇者にきまってるわ。」
「しかし前回帝国が神聖国を攻めた時は勇者は4人組だったと聞いたぞ。そのうちの1人に俺の人形が手傷を負わせたと聞いたんだが‥」
「だとしたらあいつは何?帝国が適当な報告をしてきたに決まってるわ!自分達が神聖国を攻め切れず、自分達を擁護するために勇者と戦って手傷を負わせたと報告したんでしょ!あいつはラーシュを倒したのよ!それにもし勇者じゃなかったとしても、ここで叩かないといけないの!私とあなたとあいつがいれば倒せるはずよ!さっさとしなさい!」
「何をそんなに焦ってるんだ?」
ハーフェルはシームーと呼ばれた男に近寄る。
「わからないの?ここには多分ヤバいやつがいるのよ。今は様子見してるだけかもしれない。でもいつ牙を向いてくるかわからないわ。そうなる前に早めに危険なものは排除するのよ。」
「ヤバいやつ?」
「しっ!声が大きいわ!」
ハーフェルは周りを見渡す。
「そいつが動く前に方をつけるわよ。そして残った仲間とモンスター、そして帝国兵をそいつにぶつけるわ。」
「そこまでか!?わかった。」
なんだと‥
ハーフェルの会話が少し聞こえたが、この戦場にヤバいやつが入り込んでるのか‥
俺も気をつけなければ‥
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