第684話

やはり上位魔族だったか。


「ふ〜ん、これが私達魔族を傷つける事ができる剣なのね。」


ハーフェルは地面に落ちた剣を拾い上げ、興味深そうに見ている。


そして剣に魔力を込める。

ハーフェルの魔力に反応して光剣はかなりの光を発した。


「なるほど‥持ち主の魔力で威力が変化するのね‥こんな厄介な魔道具を作るなんて‥勇者は戦うことしか出来ないような奴だと思っていたけど、予想外だったわ。魔王様に報告しなければ‥」


ハーフェルはそう呟くと、周りを見る。


「この戦争に勝つためには数名排除する必要があるわね。それに勇者も‥嫌な予感がするから早くやるべき事をしておこうかしら‥まあいいわ。アフアーブがいなくても勇者はどうにかなるでしょ。」


ハーフェルの言う数名はエルエス兄さんやスネタさんの事だろう。


残念だけどそうはいかない。

こいつの相手は俺がする事に‥


「マルコイさん!」


その時モンスターをかき分けてアシュラ君を装着している男が駆け寄ってきた。


「マルコイ‥さん‥?あ、えっと人違いでした。大変申し訳ありません。」


ラケッツさんはそう言って慌てて逃げ出そうとする。


「いやラケッツさん、人違いじゃない。」


俺は慌てて呼び止める。

そんなに怖いお面になってるかな‥?


俺的にはいい感じだと思ってるんだけど‥


「な、なんだやっぱりマルコイさんだったんですね。すみません、どこの凶悪犯かと思いました。」


し、失礼な人だな。


しかし今ラケッツさんがやってくると‥


「あら?あなたラーシュを倒した人よね?やはりあなたが勇者だったみたいね。」


俺は素早く身を隠す。


「え、え?な、なんですかこの人?え?目が赤い‥?ま、魔族じゃないですかっ!」


正解だ、ラケッツさん。


「あなたの相手はアフアーブにしてもらうつもりだったけど‥あなたも、さっきいたアフアーブと戦っていた黒い男も私が相手するしかなわね。」


そう言ってハーフェルは先程と同じように結界を発動する。


さっきと違うのは、全体に壁を作るのではなくハーフェルの前方、ラケッツさんの正面に何枚も重ねたような壁が出来ている。


「それじゃあ、あなたの力を見せてもらうわ。私はアフアーブみたいな脳筋と違って戦いを楽しむ趣味はないの。油断なんかしないからそのつもりで戦うといいわ。」


ハーフェルの壁がラケッツさんに迫る。


ラケッツさんは動揺しているのか、その場から動かない。


このままではまともに喰らってしまうが‥


そこは優秀なアシュラ君を装備しているのだ、すぐにアシュラ君が反応して壁の底面を掴んだかと思ったら、そのまま自分を引っ張っるようにして無理矢理身体を移動させる。


ハーフェルの壁の内側に移動したラケッツもといアシュラ君は拳による攻撃をハーフェルに放つ。


壁の一枚がハーフェルの元に戻り、ラケッツの拳を防ぐ。


「やっぱり強いわね‥それが魔族に対して能力が上がる勇者のスキルって事なのかしら?」


ハーフェルは睨むようにラケッツを見る。


「え?え?俺が勇者?そ、そんな馬鹿な事があるわけないじゃないか!」


いや、あながち間違っていないぞ。

ラケッツさんは魔道具の勇者に任命されたから。

俺が勝手につけただけだけど‥


「勇者の力がどれほどのものなのか‥確かめさせてもらうわね。」


う〜む。

あの色っぽい魔族さんは、ラケッツさんをすっかり勇者と思っているみたいだ。


間違えた、女神の勇者と思っているみたいだ。


残念ながら魔道具の勇者には魔族特化のスキルを持ってないからね。


「今度は掴むことはできないわよ。どうするかしら?」


ハーフェルの周りにある壁が細く形を変えていく。


そして下方に向けて鋭くなった壁をラケッツに向けて設置する。


「どこまで躱せるかしら?魔王様が言う勇者の力‥どれほどの脅威なのか私に見せて。」


ハーフェルは設置していた壁を次々と発射する。



やばい‥

俺が戦うつもりだったけど、もうちょっと魔道具の勇者の力を見せてもらいたくなってしまった‥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る