第681話

甲高い音を上げて敵に攻撃された右腕の籠手部分が爆発した。


もちろん爆発の衝撃は攻撃した人を襲い、そのまま焼き焦がした。


しかしイルケルさんの身体はそのままでは終わらず、爆発した籠手部分は勢いよく右回転で回り、そのまま勢いを増して裏拳を近くにいた敵兵にぶちかます。


殴られた敵兵は顎を爆発されそのまま動かなくなる。


殴った時に爆発し逆回転になったイルケルさん。

その回転弱まったところを狙って今度は別の兵が背中を攻撃する。


また同じように爆発して攻撃した兵を焼き焦がすと、今度は前方に前転するように回転する。


そして正面にいた兵の頭に踵落としを入れる。


相手の頭に当たった踵がさらに爆発して回転する。


うむ。

良い感じだ。


敵兵に踵落としを決めたイルケルさんは、そのまま後方宙返りして地面に背中から倒れ込む。


すると背中の部分が爆発して、イルケルさんを強制的に立たせる。


何が起こったのかわかっていないイルケルさんはフラフラしながら周りを見ている。


「イルケルさん!そのまま敵兵に正面から拳をいれるんだ!」


俺は呆然としているイルケルさんに声をかける。


イルケルさんは何が起こっているのかわからないままに敵兵に攻撃する。


すると攻撃した拳が爆発して敵兵を倒すと、勢いよく攻撃した方とは逆の後方に体が飛ばされる。


そして別の敵兵に背中からぶつかると再度爆発して、今度は別の兵に向かって飛んでいく。



す、すごい。


今回の鎧は、攻撃よりも移動に重きを置いてみた。


本当は壁に腕を打ちつけて爆発させて加速をつけて移動したり、踵を爆発させて宙に浮いたりなど、さまざまな場面で使用する事ができる。


火薬は圧縮した物を要所要所に詰め込んでおり、それを使用して火薬がなくなった場所に魔力回路を使い風の力で送り込んでいる。


これで火薬が全てなくなるまでは使用する事が出来るし、なくなってしまったら火薬を貯めておく部分を交換すれば使用できる。


爆発で破れたところは粘着性の高い布が風の力で風船のように膨らみ破れたところがくっつくようになっている。

まあ下地の粘着性がなくなれば鎧の交換が必要になってしまうが、これでかなり長く使用できると思う。


本来は火耐性のある洋服を着てから鎧をつけるべきだが、今回は渡すの忘れてたので多少熱い思いをしてるかもしれないけど‥


ま、まあ火傷はポーションで治るから大丈夫だよね‥


でもどうしよう‥

結構敵陣深くまで跳ねていったけど‥


助けたほうがいいよなぁ‥


「見よ!敵陣に斬り込んで陣形を崩している味方がいるぞ!何としても彼が命懸けで作ったチャンスを無駄にするな!突っ込んで彼を援護せよ!」


おお。

味方が反応して応援に行ってくれるようだ。


敵からは攻撃されても大丈夫だけど、身体が爆発してるから命懸けといえば命懸けだしな‥


これでイルケルさんも火薬が切れる前に回収してもらえそうだな。


よかったねイルケルさん。

多分説教は免れそ‥


「ぐわっ!な、何をする!私は味方だぞ!」


「ああ!すまない!自分の意思で止められないのだ!止まるまで近寄らないでくれ〜!」


「何を言って‥ぐわっ!」


‥‥‥。


うん。

味方にあんまり被害を出すと、単独行動じゃなくて他の理由で説教されそうだな‥


イルケルさん‥


無事を祈っております‥




イルケルさんの鎧も成功と言えば成功だな。


本当はラケッツさんに装備させたかったんだけど、今回は別の魔道具で全身覆ってたから使えなかったからね。


アシュラ君のデータも取れたから、今からラケッツさんに装備してもらおうかな‥


光属性の武器を手に持たせて爆発しても落とさないように括り付けておけば、多分剣での攻撃もできるだろ。


これでラケッツさんも魔族も倒せる勇者になるよね。


正人たちが女神が用意した女神の勇者ならば、ラケッツさんは魔道具を使って戦う魔道具の勇者ってとこかな。


よし!

これで表に出て戦える勇者がもう1人出来そうだ。


俺は鬼の面を被って裏方に徹する事ができそうだぞ。

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