第676話

「「串刺しになって死ぬがいい!」」


魔族の投げた剣が迫ってくる。


わたしは魔力を練って魔法を使う準備をする。


「『炎よ!現世に顕現し、我を不死たるものとせよ!弄火壁』!」


自分の周りに高温の炎の壁を出現させる。


全ての氷の剣が炎の壁に飛び込み、蒸発して消えた。


そしてすぐに魔法を解除する。


だ、大丈夫かしら?

バレなかったかな‥?


プリカの方を見るが様子はわからない。


バ、バレたらもう少し騒いだりするわよね‥


セ、セーフかしら‥


プリカの方からは特に何も聞こえないので魔族の方に顔を向ける。


すると魔族は全員が同じように顎が外れるんじゃないかと思うくらい口を開けてこちらを見ていた。


ちょっと‥いや、かなり気持ち悪いんだけど‥

何なのよ一体。


「「き、貴様今何をした?何故串刺しになっていないのだ‥わ、私とした事が手元が狂ってしまったのか?う、運がいいやつめ‥次こそは死ぬがいい。」」


そういうと魔族たちは氷の剣を作り出した。


もう!

これじゃ埒が明かないじゃない!


魔族は先程と同じように氷の剣を投擲してきた。


もう!

何度もやったらバレるかもしれないけど‥


さっきと同じように炎の壁を作り氷の剣を溶かす。


氷の剣はアキーエまで届かず、溶けて消える。


こ、こんな感じのスキルって思ってもらえないかしら?


魔法みたいなスキルで、飛ばせないけど身は守れるみたいな‥


「「や、やはり‥も、もしや貴様は魔法も使えるのか!?」」


いえ違わないけど違います。


それに無駄に声が大きいのはやめてほしいわ。

たくさんいるから声が響いて困るんだけど‥


「「くっ‥まさか私の作る氷の剣を溶かすとは‥」」


そして少し考えるような仕草をする魔族たち。


今のうちに何体か倒しておこうかしら‥?


そろそろと近寄っていると、何かに気づいて顔を上げる魔族。


「「ま、まさかこの街の城壁を壊したの‥」」


「わーっ!な、なに言い出すかと思ったら!ま、魔族め、もう許さないわ!」


魔族に向かい駆け出す。

もう喋れないようにしたいけど、たくさんいるからどれを倒していいかわからないわ!


「「先程の魔法の強さで納得いった!しかしわからんのは何故ここを守りにきた貴様がこの街の城壁‥」」


「『我が四面を荒野とかせ!灼眼の炎槍』」


アキーエを中心に炎を槍が形成される。


50を超える炎で作られた槍が一斉に周りにいる魔族に向かい飛んでいく。


その全てが周りを取り囲んでいた魔族に命中し、氷像の魔族を破壊する。


そして炎の槍は氷像を破壊しただけではなく、貫通してその奥にいるモンスターすらも倒していく。


「ぐっ!」


するとモンスターがいる奥の方からくぐもった声がする。


明らかにモンスターのうめき声ではなく、言葉を話せる種族の声が。


「余計な事言わないっ!誰がどこを壊したなんて今関係ないでしょ!魔族のくせに細かい所を気にするなんて卑怯よ!」


あっぶない!


魔族なのに、そんな名探偵みたいな事するなんて恐ろしい敵だわ!


放っておくと何を言い出すかわからないわね。

さすが魔族ね‥全く油断も隙もないわ!


崩れ落ちた氷像の中で、唯一血を流している魔族がいた。


「ぐぐぐ‥な、なんだ貴様のそのふざけた力は!贋者だけではなく、モンスターや壁まで破壊するなど!普通であれば氷像すら一発で倒す事などできないはずだぞ!こ、この化け物めがっ!」


確かに魔法の威力に関してはわたしも同意だわ。


マルコイにもらった指輪が原因だとわかってるけど、それにしても異常なくらい威力が上がっているわね。


その分魔力の消費量は半端ないけど、まだ余裕を持って立ち回れると思うけど‥


「く、くそ!」


魔族がまた氷像をだす。


でも魔力がないのか、それともダメージのせいなのか2体しか出せていない。


もう魔法使わずに倒せる‥‥‥


ちょっと待って‥


壁まで破壊‥?

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