第677話

恐る恐るプリカの方を見る。


プリカの城壁には、わたしが開けた大きな穴が残っていた。

そしてその穴の部分を残すような形で城壁が崩れ去っていた。


モンスターの攻撃を何度も跳ね除けた壁は、わたしの魔法で脆くも瓦礫と化していた。


「嘘でしょ‥‥」


嘘ではない。


それはわかっている。


ついカーッとなって魔法を使ってしまった。


しかもマルコイにもらった指輪で威力を上げた魔法を‥


周りにいるモンスターが壊れた壁から中に入り込もうと進み出した。


やばい‥


そう思った矢先に、空から1人の女性が舞い降りてきた。


「はっはっは!さすがアキーエ殿!散らばったモンスターを1箇所に集めて一網打尽にするために城壁を壊すとはっ!大胆な作戦ですが、効果抜群ですな!ここは自分に任せてもらっていいですか?まだまだ戦い足りないので存分に戦わせてもらいますぞ!」


空から壊れた城壁の前に降り立ったアレカンドロは迫ってきたモンスターたちを、風の力を持つ大斧で薙ぎ倒し始めた。


「どんどん来るがいいですぞ!自分はまだ大物に当たってないので、この中に強いモンスターがいると信じてますぞ!」


群がるモンスターを1匹も後ろに通す事なく倒していく。


そんな目的のためにあんな立派な城壁は壊さないし、まさかつい我を忘れて魔法を使ってしまった上に威力が上がってる事を失念してたなんて言えないわ‥


でもアレカンドロのおかげで助かった。

あとは魔族とモンスターを倒して、プリカの人に謝るしかないわ!


「な、なんなんだ貴様らは?もしやその出鱈目な強さは‥なるほどな、貴様たちが勇者だったのか‥まさかこの国に来ているとは思わなかったぞ。しかし貴様ら勇者がここにいると言う事は、他種族同士の戦争は私達の勝利と言うわけだな。」


魔族は悪そうな顔をしている。

いや、そんな悪そうな顔されても‥

わたし勇者じゃないし。


でもこれ答えないといけない流れよね?


「えっと‥わたしたち勇者じゃないわよ。でもちゃんと勇者たちもここに来てるわ。そろそろこっちに来るんじゃないかしら?」


「なっ!貴様が勇者じゃないだと!?そ、そんな馬鹿な。あれ程の強さを、魔族を単体で上回る程の強さを持っておきながら勇者じゃないなど嘘をつくな!」


いや、嘘つき呼ばわりされても‥


「ふん、貴様の戯言などどうでもいい!どちらにしろ勇者がこの国にいるのなら問題ない。あちらの戦争を制して、あの国を足がかりに世界を闇に落としてやる。貴様らがどれほど強かろうが、魔王様には敵わんからな!」


その足がかりもできないって事になりそうなんだけど‥


あっちにはマルコイとマルコイが作った変な魔道具を装着してる集団が行ってるから、こっちより酷い事になりそうな気がするわ‥


「な、なんだその憐れむような目は!こ、この私に向かって無礼だぞ貴様!」


だってマルコイがニヤニヤしながら魔道具を作ってたもん。

絶対相手は碌な目に合わないはずよ。

ちょっと気の毒になっちゃうし‥


「ふ、ふざけよって!ゆるさん!」


また魔族は氷像を出現させる。


もう何体だしても無駄なんだけどな‥


「私はまだ負けておらぬ!」



気の循環をしながら、拳に気を集中させる。


それと一緒に魔力を拳に集める。


赤い光が拳に宿る。


「その傷は隠せないわよ。もう何体出しても、どれが本体かわかっちゃうからもう諦めたら?」


「ふ、ふざけるなっ!貴様など氷像だけで倒してみせるわっ!」


魔族に向かい飛ぶように進む。


拳に宿った赤い光が宙に軌道を残す。


「残念だけど諦めて。『焼き払う拳』!」


拳は氷像の後ろに隠れようとしていた魔族の顔に直撃する。


赤い光が魔族の顔で爆発する。


魔族は顔から煙を上げながら地面を転がり動かなくなる。


「残念だけどマルコイがいる限り、貴方たち魔族に勝ち目はないわ。ちょっとおかしいけど、マルコイが誰かに負けるなんて想像できないもの。」


アキーエは気を失い動かなくなった魔族にそう告げるのだった。

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