第675話

「「魔族の中でも高貴な私に相手してもらうだけありがたいと思うがいい。死んでも自慢できるぞ。高貴なデュワイン様に相手してもらったとな!」」


何か変な事言ってるけどまあいいわ。


とりあえずどうするかよね。


‥‥‥‥


うん。

考えてもしょうがない。

とりあえず目につく相手を全部殴り倒せば、そのうち本物に当たるでしょ。


アキーエは近くにいる魔族に駆け寄る。


「「私がどれくらい高貴かと言うと、魔王様の直系の‥ぼごんっ!」」


手近な魔族を殴ってみたが、やはり氷の彫刻だった。


手当たり次第に行くしかないわね。


「「き、貴様!私の話の途中だと何回言えばいいのだ!お前如き、本来であれば私と会話することすらできないの‥ぼごんっ!」」


魔族は喋るのに夢中みたいだから、今のうちに数を減らしておこうかな。


「「き、貴様!もう許さん!思い知るがいい!」」


そうそう上手くいかないみたい。


棒立ちしていた魔族が全てわたしに向かってきた。


その手には氷で作った剣を持っている。


同じ顔が迫ってくるのは少し気持ち悪いわね‥


左右から氷の剣が迫ってくる。


片方は躱してもう片方は手の甲で軌道を逸らした。


軌道を逸らした魔族は体勢を崩したので、その隙に腹部に拳を放つ。


拳は腹部を貫通して、魔族は氷になって崩れ落ちた。


「「ふん!そらどんどん行くぞ!」」


躱して殴る。

躱して殴るを繰り返す。


一体一体はそれほど強くはないが、ダメージを喰らうのを恐れてない。

捨て身のような作戦だ。


「「な、なんなんだ貴様は!その氷贋者は私と同じ強さなのだぞっ!そ、それを一撃で倒すなんて‥」」


あ、そうなんだ‥


てっきり強さが十分の一とかになってるのかと思ってたけど‥

元の魔族が弱いってことかな?


「「く‥ま、まあいい。貴様のその強さがいつまで続くかな。その強さを保てるのも無限ではあるまい。貴様が倒れるまで私の氷像と踊るが良い!」」


魔族がスキルを使ったのだろう、同じ顔の魔族氷像が多数また現れた。


今度は数えるのが面倒なくらいいる。

50はいないと思うけど‥


好きな人ならまだしも魔族の、しかも少し生理的に受けつけない顔がたくさんあると気持ちが悪くなってくるわね‥


「「はっはっは!逃がしはせん。」」 


魔族たちはわたしを囲むように移動している。


冗談じゃないわっ!

このまま放っておくと、城壁を壊した事がバレる可能性があるから逃げたりしないわよっ!


こちらから突っ込もうかと思ったけど、魔族たちは一定の距離を保ったまま近寄ってこない。


何かする気‥?


そう思い挙動を観察していると、魔族が一斉に投擲する構えをとる。


「「ふはははは!この数の投擲を躱せるか?生き残ったとしても何度でも何度でも同じ事を繰り返してやるぞ!この私を侮辱した罰だ!その場で情けなく命乞いするがいい!貴様の情けない姿を見せれば、もしかしたら私の気持ちも変わるかもしれんぞ!」」


う〜ん、うるさい。


全員が一斉に喋るから、耳障りでしかないわね。


でもどうしようかしら‥


流石にこの数の武器を投げられたら躱すのは難しそうね‥


その時魔族の後方から大きな音がした。


よく見るとモンスターが宙を舞っている。


あ、アレカンドロだ。


すぐに追いつくと思ってたのに随分とゆっくりしてたわね。


「「な、なんだあれは?何故モンスターが宙を舞っている?」」


「多分わたしの仲間よ。ゆっくりしてていいのかしら?彼女は強そうな人がいればすぐに駆けつけるわよ。」


「「ちっ、まあいい。俺の他に下級とはいえ魔族がいる。例え其奴が強いとしても私が参加すれば問題ない。しかし残念だ。貴様と遊んでいる時間はなさそうだな。死ね。」」


魔族が一斉に氷の剣を投擲した。


50近い数の氷の剣がわたしに向かって飛んできている。


えっと‥


ちょっとだけなら大丈夫よね。

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