第674話

対峙している魔族は氷の鎧を装着したまま悠然と歩いてくる。


な、なんで氷系のスキルを使ってるのよ‥


ま、魔族の攻撃せいで城壁壊れたって思われてるんだがら空気読みなさいよね‥


「しかしゴミとはいえ、1人でここまで来たのは褒めてやろう。まあただの無駄死にだがな。お前はこのゴミ達がいる街を守るためにやって来て、何も出来ずに死んでいくのだ。」


ま、まずいわ。

ここでわたしが火属性の魔法を使って、相手が氷属性で攻撃してきたら、城壁を壊したのがわたしじゃないかと気づかれてしまうかもしれない‥


こうなったら火属性の魔法を極力使わずに、近接戦闘で早めに決着をつけるしかないわ。






「お前は真なる絶望を知ってから死ぬがいい。見せてやろう。私の‥」


アキーエは魔族に向かって飛ぶ。



気の扱いを鍛錬していたアキーエは、自身の身体をより効果的に動かせるようになっていた。


移動する時に気を脚に込めて移動する。


それだけで爆発的なスピードで移動する事ができた。


最初は気を込める強さがわからずに地面が爆発して顔から倒れたこともあった。


それでも諦めずに気の流れを探求した。


そして気づいたのだ。


必要な時に気を流すのではなく、常に身体に気を循環させるのだ。


体内であれば気を流していても、気が消費されることはない。


それに気を循環させる事で身体能力の向上も図れる。


それは気を必要な時に必要な分を必要な場所に送る事で、飛躍的に身体能力を上げる事ができるためだ。


これだけでも十分に強いと思う。


でもわたしはこれに魔力を掛け合わせる事ができる。


別々に循環させていた魔力と気を融合させる。


融合された物が身体から溢れ出てくる。


それは薄らと赤い光となり身体を包み込んだ。




常人であれば10歩はかかる距離を、アキーエは1歩でその距離を飛び越えた。




「俺様の偉大なるスキルを用いて、貴様に地獄を味合わせてやろう‥今さら命乞いなどしても無駄だぞ。お前達のような虫ケラにそんな事をされた所で俺の感情は動かんか‥ぼごんっ!」


一気に魔族の懐に入ったアキーエは、その拳で魔族を撃ち抜いた。


一撃で決めたと思ったが‥


「な、な、な、何をするんだ貴様っ!まだ話してる途中でしょうがっ!」


さっきと違う場所から魔族の声が聞こえる。


アキーエが撃ち抜いたはずの魔族は地面に壊れて転がっていた。

氷の彫刻として。






「そ、それになんだ今の速さはっ!あと贋者とはいえ一撃で砕くなんて力も異常だぞ!」



いちいちうるさいわね。

早めに勝負を決めないといけないのに‥


これ以上長引かせて魔族が氷を使うってバレたら、じゃあ誰が城壁を爆発させたんだってなるじゃない!


まずい‥

まずいわ‥


ちゃんと後で謝るつもりだけど、今バレるのは心の準備が出来てないからやめてほしい!


再度身体に赤いオーラを纏わせる。


一気に決めなきゃ。


魔法は使わず近接戦闘で戦うために距離を詰める。


「な、なんだお前は!本当に人族か!?くそっ!『氷装贋人界』」


魔族に向かい進んでいると、突然周りに気配が現れる。


周りを探ると、氷の鎧を着た魔族が多数現れていた。


とりあえず不思議な現象だけど、目標を変更して手近の魔族を殴り倒す。



すると先程の魔族と同じように氷になり崩れ落ちる。


「「まったくこれだからゴミは困る。俺様の雄大なスキルを目にして平伏する時間がなくなるではないか。」」


現れた氷の魔族全員が同じ言葉を発する。


「「どうだ?絶望的であろう。お前は今からこの数の私と戦うのだ。」」


数としては20体くらいかな‥?


魔法を使っていいなら何とかなりそうだけど、魔法なしで戦うとなると少し厳しいかもしれない‥


思い切って魔法を使おうかな‥


でもわたしだって気づかれたら‥

助けに来ておいて、壁を壊すなんて非常識よね‥


よし!

とりあえずギリギリまで頑張ってみよう!

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