第672話
サイクロプス。
一つ目の巨人で、その鋼鉄のような筋肉から放たれる攻撃はそれだけで天災のようなものである。
対峙したら歴戦の戦士であろうとも決死の覚悟となるだろう。
そのサイクロプスが‥
あやめの前をボールのように飛んでいった。
「あ、あれ?」
目の錯覚かと思い、目を擦って前方を見る。
すると今度は紙飛行機のように折り畳まれたキラーマンティスというカマキリのお化けみたいな奴が飛んで行った。
「ねえ正人‥あれって移動してるの?」
「いや、違うんじゃね?飛ばされてるように見えっぞ。」
「だよね。あのモンスターの群れの中で台風みたいに暴れてるのってアレカンドロさんよね。」
「あやめちゃん‥あそこ見て。」
恵が指差した方を見るとリルさんがモンスターを次々と斬り伏せていた。
強いとは思ってたけど‥
あれ‥?
ここにいるモンスターって強いモンスターばかりだったわよね‥
「おお!マンティコアが一撃で!」
卓が興奮している。
それもわかる。
ここまでマルコイの奥さん達が強いとは思わなかった。
あたし達が苦戦するようなモンスターをゴブリンみたいに倒してる。
そんな中、1人の男がモンスターの後ろから歩み出てきた。
人型のモンスターじゃない。
あれは魔族だ。
あたし達がここに来たのは魔族を相手するためだ。
魔族相手であればあたし達パーティはどこまでも強くなれる。
「貴様ら!このゴヤ様の侵攻を妨げようとはいい度胸だな!」
いくら奥さん達でも魔族の相手をするのは大変なはず。
ここはあたし達が相手をしないと!
「俺様が相手して‥ぐぼっ!」
魔族はアキーエさんの一撃で吹っ飛んでいった。
あ、あれぇ‥?
マルコイにも言われたし神聖国にいた時もずっと言われていたけど、魔族を相手出来るのってあたし達だけじゃなかったっけ?
それにアキーエさんって気は強そうだけど、淑女であたし達の事も何かとお世話してくれた。
そんなアキーエさんが魔族を殴り倒すなんて‥
しかも恐ろしく吹っ飛んだんだけど‥
あれって倒したんじゃないのかしら‥
「き、きしゃま!な、なにゅものだ!」
よ、よかった!
魔族は死んでなかった。
これであたし達の存在意義が‥
「な、な、なんなんだお前ら‥ここにいるのは高ランクのモンスターだぞ!そんな数人の冒険者でどうにか‥なるなんて‥」
そうよね。
あたし達もどうにかなるなんて思ってなかったわ。
実際今まで見た事のないような高ランクのモンスターばかりだった。
アニメとかだとここで負けても生き残って、レベルアップしてから挑むみたいな流れだと思う。
でもこれは現実だ。
負けたら生き残れるとは思えない。
だから命を救ってくれたマルコイの奥さん達は守りたいと思っていた。
ぬるい世界で生きてきたあたし達だけど、それでも覚悟を決めてきた。
だけど‥‥
あれぇ?
魔族を殴り倒したアキーエさんの次はリルさんが魔族を追いかけ回してる。
リルさんもとんでもなく強い。
あたし達と模擬戦してた時は手を抜いてるってわかってたけど、抜いてるどころじゃなかったのね‥
「へぇ、剣神リルね。随分と強いんだってな。先生に散々言われたぜ。剣神リルには手を出すなってよ。でも俺もまだ十魔にはなってないが、魔族じゃ剣士として割と名を馳せてるんだ。是非相手してもらおうか?」
新しい魔族が出てきた。
何でだろう‥
今度こそあたし達がって思うんだけど、リルさんの余裕から手出しする必要がない気がする‥
魔族に剣神って言われるリルさんって一体何者なのかしら‥?
で、でも魔族を倒すのならあたし達の光属性の力がないと無理よね!
あたし達はリルさん戦いが見える場所に移動する。
な、なんか良い所取りみたいだけど仕方ないわ。
するとアキーエさんが追いかけていた魔族が何らかのスキルを使ったようだ。
倒したはずのモンスターが起き上がってきた。
もしかして死霊術?
そ、そんなスキルが‥
「お、お、お肉が!お肉が一気に腐ったですぅ!」
お、お肉?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます