第669話

ミミウの声が聞こえた。


どうやら無事に魔族を無効化する事ができたようだ。


わたしが殴っちゃった魔族はそれほど強くなかったから、倒す事が出来なかったとしてもミミウのスキルなら魔族を動けなくする事ができるだろうとは思っていた。


あれが戦闘に特化したような魔族ならミミウ1人じゃ危なかったかもしれないけど、スキルも変なスキルだったし。


スキルを使用していた魔族が倒れたためか、今までどれだけ攻撃しても動いていたアンデッドが糸が切れたように動かなくなった。


これで安心して生きてるモンスターも倒す事ができるかな。


その生きているモンスターだけど、周りを見ると倒したそばから姿が消えている。


多分キリーエが回収してるんだと思うけど、全く見えない。


ちょっとした怪奇現象だ。


一緒に来た冒険者たちの倒したモンスターは回収してないみたいだけど、わたしたちパーティが倒したモンスターは地面に倒れるまえに回収されている。


回収される瞬間も見てるんだけど、キリーエが見えないのが怖い。


近くで見てたバラックスさんも驚いてるし、ボヤンさんなんて尻餅ついて指差しながら口パクパクさせてるわよ。


まあでもとりあえずこれで此方に向かってきたモンスターについては片付いたかな。


後はトールルズを攻めている残りのモンスターね。


あれ?


よく考えてみると、わたしって何かしたかしら‥?


最初にドラゴンにむかって自分でびっくりするような魔法使ったくらいで何もしてないような‥


あっ、魔族は殴ったわね‥


でもこの程度の活躍だと正妻としての立場が‥


だめよ、今はそんな事を考えてる場合じゃないわ。


みんなでトールルズを守るのが役目なんだから。


だから次は防衛のためにプリカに向かわないと!


「ちょっと自分消化不良なんで、先に行って戦ってきます!」


アレカンドロがスキルを使いプリカの方に飛んでいく。


「あっ!ちょ、ちょっと待ちなさいよアレカンドロ!ずるいわよ!」


「キリーエ!お願い!」


すると突然アキーエの目の前にキリーエが現れる。


「はいはい。これでいいんかな?」


キリーエは【ボックス】から羽根人形を取り出す。


「ありがとうキリーエ!そのまま魔法を使って飛んでもいいけど、ここら辺に被害がでちゃうから!」


そう言ってアキーエは羽根人形を背負い宙に舞う。


そして両手から爆炎の魔法を使い恐ろしいスピードで飛んでいく。


「そこら辺の常識はあるんやね‥でも羽根人形使っても、止まれないのは止まれないんちゃうかな‥?」


キリーエはトールルズに向かって飛んでいったアキーエを見ながらそう思った。






「アレカンドロ!ちょっと待ちなさいよ!」


アキーエは羽根人形で空に浮き爆炎魔法の慣性を使って追いついたアレカンドロに声をかける。


「おお!アキーエ殿!そうですかアキーエ殿も暴れたりませんでしたかっ!それでは2人で暴れましょうぞ!」


「ちょ!違うわそれ!いや、違わないのかな‥?」


飛び出した目的が自分も活躍するためだったので、アレカンドロの問いもあながち間違いではなく、答えに困るアキーエ。


「えっと‥あ、あれよ。アレカンドロ1人じゃ危ないと思って!」


「なるほど!申し訳ありませぬ。本来は自分1人でも大丈夫と思ってもらえるようにならないといけませぬが‥助太刀感謝いたします!」


いや、アレカンドロ1人でも心配ないとは思うんだけど‥


「と、とにかく2人で頑張りましょう!」


「承知しましたっ!」


アレカンドロと2人でプリカを攻めているモンスターの群れに空を飛んで向かう。


モンスターの群れが直ぐそばまで来た時にアキーエは気づく。


「あ、あれ?止まる事まで考えてなかった!どうしよう!?」


このまま突っ込んでしまったら少なからずダメージを負ってしまう。


スピードを緩めるために、アキーエは進行方向に魔法を放つ。


モンスターにとっての死の爆炎を‥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る