第668話

ゴヤはミミウを取り囲んでいるミノタウロスの群れにスキルを発動する。


するとミノタウロスの目が白くなり、皮膚が腐敗していく。


「何故かわからないが、貴様はミノタウロスが苦手のようだな!俺のスキルによってミノタウロス達は死を恐れぬ不死の軍団となった!いくら攻撃しても死ぬ事がないミノタウロス達の前に恐怖して死ぬがいい!」


「あーーーーーっ!お、お肉さんたちがぁ!」


ふるふると震えているミミウを見ながら怪訝そうな表情を浮かべるゴヤ。


「肉だと?何を言ってるんだ貴様は‥?」


「もう絶対に許さないですぅ!誰が許したとしても、お肉だけは絶対に貴方を許しませんっ!」


「な、な、何を言っているんだ‥?」


すると今まで丁寧な立ち回りをしていたミミウのゴーレムが突然凄まじい勢いで動き出す。


ミミウが座っている場所より上の部分が回転する。


徐々に加速を増した腕と身体は、風を巻き起こしながらミノタウロスの群に突っ込む。


最強の不死の軍団であったはずのミノタウロスたちはあっという間に身体を引き裂かれて地面にばら撒かれた。


「ひ、ひぃ!な、なんなのだお前はっ!」


ガヤは突然梃子摺っていたはずのミノタウロスを弾き飛ばし、自分に迫ってくるゴーレムに驚き後退りする。


すると迫って来たゴーレムはガヤの目の前で腕を一本上空に打ち上げたと思ったら、その鉱石と思われる身体が突然崩れ出した。


ゴーレムに乗っていた少女が地面に降り立つ。

少女は息が荒く、肩で息をしているようだ。


「ふ、ふ、ふはははは!なるほど!あの大きなゴーレムは貴様の魔力を使って動かしていたんだな!そして今魔力が切れてゴーレムの形を維持する事が出来なくなったわけか!残念だったな、貴様の猛攻はここまでだ!」


「ふぅ‥トドメですぅ。」


少女が頭を下げたまま何か呟いている。


「命乞いか?残念だがそうはいかんぞ!」


ゴヤが少女に近寄ろうとすると、少女は突然顔を上げてゴヤを見つめる。


「お肉は正義ですぅ!そんなお肉を粗末にする人には正義の鉄拳ですぅ!『巨大精霊隕石拳!』」


ゴヤの周りが突然光を失い暗くなる。


それが影である事に気づいたゴヤは上空を見上げる。


確かにゴーレムが解除される前に腕を上空に切り離した事は知っていた。


おそらく腕を回していたが、スキルが解除されたために遠心力で飛んでいったものと思っていた。


その腕が‥

大きな鉱石の塊となって落ちて来ている。


これは避けようがない。

潰れて長い間動けなくなるだろう。

それにこの鉱石が落ちた後、鉱石を動かす気がないのなら出る事もままならず寿命を迎える事になるだろう。


完全に負けが確定した。


だがゴヤは最後にどうしても気になることがあった。


「おいっ!お肉が正義ってどう言う事だ!肉を粗末にすると‥‥だと‥?」


問いかけながらゴヤは気づいてしまった。


もしかしてコイツはモンスターを食べるつもりで狩っているのか‥


だとしたらお肉と言っている事も、アンデッド化した事に怒っている意味もわかる‥


しかし人を襲うモンスターを逆に食べるなんて‥


魔族以外の種族にとって、モンスターは見つかったら襲いかかってくる天敵だったはず。


でもそのモンスターを食べるなんて‥

コイツの方がモンスターの天敵じゃないのか?


「そ、そ、そんなもの、お前の方が魔王‥ぎゃーっ!」


ゴヤは上空から降ってきた巨大な鉱石の拳にその身体を押し潰された。


食欲って怖い‥

そんな事を考えながら‥






「食べ物を粗末にする悪魔!成敗ですぅ!」


魔族を精霊の力を借りて倒す事ができた。

さっき弾き飛ばしたアンデッド化したミノタウロスが動かなくなったので、倒す事で無事にスキル効果が切れたのだろう。


正直魔力切れ寸前だった。

だがこれ以上お肉が食べれなくなるのを許せなかった。


「みんな今のうちに倒してくださいですぅ!キリーエさんお肉の回収お願いするですぅ!」


ミミウは疲れた身体を休める事なくお肉回収に走るのだった。

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