第665話
リルは横薙ぎに放たれた剣を躱すが、避けきれず頬に傷を負う。
傷自体は浅いが、出血があり頬から血が滴る。
「ほお。まさか初見で躱されるとは思わなかったぞ。さすが剣神だな。」
「‥‥‥スキルで剣つくった」
「はっは!さすがだな。その通りだ。俺のスキル【許多剣製】だ。無数に剣を作り出す事ができる。こんな感じでな。」
ジャレドの剣を持っていない方の手に黒い粒子が集まる。
そしてその粒子はジャレドがもう片方に持つ剣と同じ形をとった。
「驚いたかっ!そらどんどん行くぞ!」
両手剣でリルに攻撃するジャレド。
「べつにおどろいてない。スキルもアレカンドロの方がすごい。」
「んだと?はっ、手も足も出ないくせに何言ってやがるっ」
ジャレドは両手に持った剣でリルに襲いかかる。
ジャレドは袈裟斬り、薙ぎ払いを放ちリルを後退させる。
そして左に持つ剣を上段から振り下ろす瞬間に、もう片方の剣を地面に刺す。
すると剣より前方にある地面、リルが立っている辺りが急に泥濘む。
「はっはぁ!死ね!」
剣がリルに当たる直前、突然ジャレドの身体が重くなる。
「な、なんだ?」
リルは足が泥濘に入っているのを感じさせない動きで後方に退がり剣を躱す。
「な、なにしやがったお前!」
「お前よわいし剣士でもない。つまらない」
「んだとテメー!逃げるだけのくせに何言ってやがる!」
「剣を出さなかっただけ。お前とたたかうよりアレカンドロの方がたのしい。」
「ああ?」
「他につよいのがいるかも。アレカンドロにとられるとこまるからもう終わり」
「『刀纏水姫』」
リルがスキルを使う。
不可視の膜が戦場を包む。
「な、なんだ?身体が重い‥」
目の前にいるジャレドが身体に違和感を感じる。
戦場にも変化が現れる。
「なんだ?身体が軽いぞ?」
バラックスさんがすぐに身体の変化に気づく。
「お、お前が何かしたのかっ!」
ジャレドは周りの変化に視線を向けた後にリルを見る。
しかしジャレドの視線の先にはリルはいない。
「たたかってるときに視線はずすのはだめ」
その声はジャレドの真横から聞こえる。
「なっ!」
すぐに飛び退くが、リルは一歩でジャレドに追いつく。
「斬:炎狼」
無数の剣撃がジャレドの身体に走る。
「がはっ!」
身体に無数の傷を受けてジャレドは地面に膝をつく。
「ぐ‥く、くそ‥何しやがった!絶対にゆるさねえ。傷が癒えたら覚えとけ!絶対に後悔させてやる!」
「ざんねん。つぎはない」
リルは持っていた片刃の剣を鞘に戻す。
「キリーエいる?」
「どないしたリルちゃん?」
「ふおっ!ほんとにいた」
まるで突然そこに現れたキリーエに呼んだリルが驚く。
「なんやのリルちゃん。自分で呼んどいて。」
「キリーエがもってる剣かして」
「ん?マルコイさんの工房から盗ん‥借りてきたやつ?」
「ん。」
キリーエはスキル【ボックス】から一本の剣を取り出す。
装飾もされていないような、何の変哲もない剣だ。
帯革だけが若干厚みがあるのが特徴といえば特徴的だろうか。
「ふん!お前も魔族なら知っているだろう!俺たちは寿命か光属性でなければ死なないとな。そんな剣で攻撃されたところで死にはせんぞ!もし俺を捕まえたとしても、お前が24時間俺を見張ることはできまい。絶対に抜け出してお前を殺してやるからな!」
「しってる。だからこの剣。」
リルは剣に魔力を流す。
すると魔力は帯革を通り、剣身に流れていく。
そして剣は徐々に光を放ち出す。
「な、なんだその剣は!ま、まさか!」
「そう。光属性。帯革があるからいいけどなかったらリルも火傷する。」
「そ、そんな魔道具があるはずがないっ!に、にせものだ!」
「にせものかどうかは使ってみたらわかる。変態マルコイがつくった剣だから、こうかばつぐん。」
そう言ってリルは剣を構えた。
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