第658話

う〜む、脳筋魔族がクワイスに踏み潰されてしまった。


少し待ってみたが、脚を持ち上げて「こんな物〜」みたいな事は起こらないらしい‥


「クワイス。こっちは大丈夫だけど脚を上げてもらっていいか?」


「ああ、わかった。何か踏み潰したような気がしたけど大丈夫かい?」


そ、そうですね。

とりあえず不憫だけど、敵だから大丈夫です。


「大丈夫だ。こっちはいいから、モンスターを頼むぞ。一応武器とか技とか積んでるから、楽しんで戦ってくれ。」


「おう、わかった!いや、わかったじゃない楽しまずに真面目に戦ってくる!」


またまた。

顔が楽しそうだぞ。

なんだかんだ言っても巨大ゴーレムは男の夢だしなぁ。


それに巨大ゴーレムが出現してから、スキャンの動きにキレが増したような気がする‥


同じゴーレム乗りとして負けれないんだろうか‥


この戦いって結構大事な戦いだった気がするんだけど‥

何故かゴーレムのお披露目会みたいになってるなぁ‥



クワイスの乗るデッカイが脚を上げて移動する。


すると移動したデッカイの脚があった場所に人型の穴があった。


近寄って覗いてみると、潰れたアフアーブが埋まっていた‥


「ぐ、ぐが‥」


さすが魔族、虫の息だけどちゃんと生きてる。


デッカイは軽いままだと不安定だし、重心を低くするために下肢をかなり重くしている。


それこそ鉄製のゴーレムなんかより重いんじゃないだろうか。


その重量をまともに不意打ちに近い状態で喰らったからな‥


それでもこうやって瀕死でも生きているのは魔族だからって事とこか。



う〜ん、でもどうしようコレ?


ほっとくと復活してしまいそうだけど、このままトドメを刺すのも気が引けるんだけど。


とりあえず手足縛ってればいいかな?


ぺちゃんこに潰されてなんとか生きてるって感じだからほっといてもしばらくは大丈夫だと思うけど、念のためにな。


戦況はまだ帝国の方が有利みたいだけど、何とか持ち直したようだ。


まだ予断は許さない状況ではあるけど、俺の魔力も多少は温存できてるから不足の事態にも対応できる。


このままいけば帝国に勝てるはずだ‥






「な、なんなのよ一体!」


ハーフェルは目の前で起こっている事に理解が追いつかない状況だった。


「万全を期してモンスターを呼んだはずよ。神聖国の兵を蹂躙して、勇者を殺してここを足がかりにして世界を、全てを手に入れるはずだったのに‥」


モンスターは神聖国兵を倒すはずだった。


途中で現れたゴーレムや爆弾を使った攻撃なんかで数を減らされてはいたが、それでも数的に優位に立っていた。


爆弾の攻撃も止み、神聖国兵に被害が出始めた時に突然現れたのが巨大なゴーレムだ。


動きは遅いが歩くだけでモンスターの数を減らしている。


それを見た帝国兵の士気が下がり神聖国に押されだした。


それに1番はアフアーブだ。


気に入らない奴だけど、戦いに関しては十魔でも1、2を争う奴だ。


そのアフアーブと戦える奴がいたのだ。


アフアーブが押されていたので、あれが勇者なんだろうか?


しかしラーシュと戦っていたのが勇者じゃなかったのか?


勇者が2人いる?

そんな馬鹿な!


それに勇者と戦ってる最中に、まさかアフアーブがあのゴーレムにやられるなんて‥


勇者であれば、あの後にトドメを刺されているはず。



勇者はモンスターの大軍と帝国兵で倒すはずだったのに、まさかその前に十魔がやられるとは思わなかった。


計算外の事が起こり過ぎている。


撤退すべきだろうか‥


いや、魔石をここまで大量に使ったのだ。

逃げるわけにはいかない。


それに完全に劣勢な訳ではない。


まだこちらが優勢だ。


これから最善の行動をすれば必ず勝てるはずだ。



ハーフェルは判断した。

ここで勝つべきだと。


それが間違った判断だとは思わずに‥

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