第656話

十魔アフアーブか。


魔王の手下で強い奴10人の中の1人って事かな?


自分からデッカイに戦いを挑みにきた奴だから、多分十魔とやらでも強い方なのだろう。


「いくぞゴーレム!」


アフアーブはデッカイに向かって走り出した。


俺はデッカイとアフアーブの間に滑り込み、剣をアフアーブに向ける。


「おっと、いきなり本命と戦わすわけにはいかないな。先に俺と戦ってもらおうか?」


「おお!お前はさっき一騎打ちをしていた男かっ!面白い!今日は素晴らしい日になりそうだ!神聖国など弱者しか居らぬと思っていたが、まさか俺が戦いたいと思うのが2人もおるとはな!それではまずはお前から喰わせてもらうとするかっ!」


おうおう。

魔族の脳筋ですか。


ちなみに1人とゴーレムだけどな。


アフアーブその場から動かない。

スキルでも使ってるのか?


なら今のうちに鑑定でもするかな‥


俺は動かないアフアーブに魔力を練り上げ、鑑定をかける。


アフアーブ

スキル【身体狂化Lv.3】【格闘鬼Lv.9】【鉄壁Lv.5】


う〜ん‥

脳筋だったわ。


強さだけでいうと十魔とやらでもかなり上位なんじゃないかな?


しかし魔族はトリプルスキルが基本なのか?

他の種族はダブルスキルでもそんなにいないのに反則だよな‥


特に人族なんかシングルスキルが基本だしな‥


まあ俺が言う事じゃないんだけど。



「ふん。なにかスキルを使ったようだが、準備は終わったか?何を使ってもいいぞ。お前も他の奴が使ってるように魔道具を使うといい。そして俺を楽しませろっ!」


いやだよ。


アシュラ君なんて使ったら危ないし、爆弾とかも巻き込まれたらやだし。


「大丈夫だ。心配しなくても。まあただ楽しめるかどうかはわからないけどな。」


スキル【カルマカンカァ】は多量の魔力を使う。

正直言って、本気で魔族と戦ったら1〜2人と戦えば魔力が切れるだろう。


その時は『魔力供給』できる籠手を使えばいいと思うが、爆発すると怖いのであれは最終手段だ。


今回の魔族は10名程度いる。

俺が全てと戦うとなると魔力が切れて負けてしまうだろう。


だけど今回は光属性の武器を持った味方がいる。

だからコイツを俺が今倒しても魔力は温存できるはずだ。


もしもう1人同じくらい強い奴が現れたとしても、時間を稼いでもらって魔力を回復させれば充分相手できるだろう。


「一騎打ちの時に、あれほどの膂力を見せたのだ。近接戦闘が得意なのだろう?大いに殴り合おうではないかっ!」


近接戦闘が得意?

残念だけど、近接戦闘が得意なのは俺じゃないぞ。

リルさんとかアレカンドロさんとか‥

あとは殴ったら爆発したり、デッカイ拳で殴ったり‥


あれ?

うちのパーティって近接脳筋ばっかりじゃないかな‥?



でも残念ながら俺は遠距離もできるようになったんだよ。



「『エンチャント:穿つ者』」


スキル【カルマカンカァ】のエンチャントである『穿つ者』を発動させる。


スキル【賢者】を身に纏う。


「『雄大なる風の精霊よ。我の求めに応じ穿て!風刃烈波!』」


風の刃がアフアーブを襲う。


「なっ!魔法だと!」


そうなんだよ。


勇者たちのスキルを模倣した事で、それぞれのスキルを特化したエンチャントを使うことができるようになったのだ。


勇者を纏う事で、光属性と力を。


そして賢者を纏う事で魔法と知を。


残念な事に賢者である卓に知性を感じることはないのだが‥


エンチャント:氷とは違い、攻撃魔法を発動する事ができる。


ただ、エンチャント:穿つ者を使っている最中に光属性を使う事はできないし、逆も然りだ。


光属性を使いたい時はエンチャント:勇敢なる者を発動させる必要がある。


しかしそれでも強過ぎるスキルだ。


多分リルにも勝てそうな気がする。


遠距離からだけど。




だが気になる事もある‥

これだけのスキルを俺が得る必要があったと言う事だ。


もしかしたら思っている以上に『あのお方』とやらが強いのかもしれない‥


まあ女神が駄女神で、間違いだった!とかだったらいいんだけどな。

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