第654話

エルエス兄さんの攻撃や、羽根人形部隊による爆撃でモンスターは数を徐々に減らしている。


しかし‥

とにかく数が多い‥


木偶爆弾も在庫を使い切ったようだ。

ここ一月は光属性の武器やアシュラ君作りに没頭してたから、木偶爆弾は作ってなかった。


まさか敵がこんな方法でモンスターを送り込んでくるとは思わなかったからな。


遠距離攻撃から近接戦闘に切り替わる。


搭乗型ゴーレムに乗ったスキャンさんや、少し改造して使いやすくなったハンマーを振り回して敵陣に突っ込むスネタさんの姿が見える。


この2人を中心に魔道具速いぞ君の部隊が、モンスターの軍勢を相手している。


だがやはり劣勢だな‥


魔道具を使った傭兵部隊は次々とモンスターを駆逐している。

だが、全てのモンスターを一気に相手できるはずもなく、傭兵部隊と戦っていないモンスターは神聖国の兵に向かっている。


傭兵部隊が勝ったとしても、神聖国の兵が負けてしまえば、この戦いは負けになる。




この戦況を変えるためには、何か大きな事が必要だろう。


「クワイス‥やっぱり使うしかないぞ。」


すると近くにいたクワイスはビクッとして俺を見る。


「ええ‥やめとこうよマルコイさん。だってまだ試運転もしてないんだろ?そんな物をぶっつけ本番で使うなんて、自殺行為だよ。」


「もうそんな事言ってる場合じゃないぞ。このままだったら戦いに負けてしまう!それじゃ全てが無意味になってしまうんだぞ!」


「マルコイさん‥‥‥‥真剣で切羽詰まってる事を言ってるのに‥‥何で‥‥何でそんなに笑顔なんだよ‥」


ええ〜、そんな馬鹿な‥


こんな危機的状況では、さすがの俺も笑うはずが‥


あ、口角が上がってた‥







俺は前々から思っていた2つ事がある。


1つ目は、クワイスは何故魔道具を使おうとしないのか?


実験に協力はしてくれるけど、いざ戦いになったら他の人に魔道具を使わせて自分は何も持たずに戦っている。


本人に聞いたら、「俺は団長だから、周りを見ながら指示を出す必要がある。だから自分から率先して戦いの中に身を投じてはいけないと思ってるんだ。」との事。


確かにクワイスの指示は的確で、今まで何度も『アウローラ』のピンチを救ってきた。


同じ団長でも、スネタさんは先頭になって戦う人だが、戦いの最中は副団長であるエルエス兄さんが指示を出している事が多い。


大まかな指示をスネタさんが出して、細かい調整などはエルエス兄さんがするって感じだな。


『アウローラ』に関しては副団長のメンセンが特攻して戦うタイプなので、クワイスが後方支援や指示に回る必要がある。


だが、それと魔道具を使わない事は関係ないと思う。

いや、あるけど。


確かに速いぞ君を装着して後方支援に回っては意味がないと思ってしまうのかもしれない。

なら指示を出して戦える魔道具なら問題ないと思う。





そしてもう1つ。


俺の作った男のロマンを使う場面がないと言う事だ。

これについてはいつの日か、いつの日かと思いながら今日まで日の目を見ていない。


これでは折角作った、男のロマン魔道具が可哀想すぎる‥


俺の『スペース』の中で「まだかい?」とずっと問いかけてくるのだ。



まあ実際完成まで漕ぎ着けたのは最近なんだけど。


でも魔道具の性質上、今まで実験すらする事ができなかった。





そして今‥


その2つを一気に解決できる状況下になってしまった。


相変わらずクワイスは乗り気ではないが、もう君の意見は聞く事はできない‥


だってピンチなんだもん!

ヒャッハー!


「ここで戦況を一気に覆すには、『あれ』にクワイスに乗ってもらうしかないと思うんだが‥」


「確かにそうなんだけど‥」


クワイスは悩んでいる。


でも知っているよ。

この状況下で、君が断らないって事は‥


「わかったよ、マルコイさん。覚悟を決めるよ。」


「よっしゃー!じゃあ早速出すから乗ってみよう!」



俺はそう言って『スペース』から魔道具を出す。





全長15mはあろうかという搭乗型ゴーレムを‥

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る