第652話

戦場に突然太陽が出た。


まあそんな事が実際起きるはずはないが、そのくらいの光だった。


しかもその光には見覚えがある。


俺の網膜を焼いた魔の光だ。


「あ、ラケッツさん閃光弾使ったみたいだな。」


目が見えなくなって治療するのにスキルを使う羽目になった悶絶するほど強力な光だ。


そう言えばラケッツさんに直接見たら駄目だって事伝えてなかったな‥


まあラケッツさんの事だから投げた瞬間に爆発すると思って反対向くとは思うけど‥


もしかしたら悶絶しているかもしれないから助けに行こうかなと思ったら、すぐに光属性の魔道具が発動した光が見えた。


やはり無事だったか。


ラケッツさんはその辺の事は何故か上手い事やるもんな。


あの光属性の魔道具は、俺がスキルで付加できる状態にしてそこに正人がありったけの光属性の魔力を注ぎ込んで作った逸品だからな。


数は数個しか出来なかったけど、ある程度の魔族なら手傷は負わせる事が出来ると思う。


リルに聞いたら「そのくらい気合でいける‥」とか言ってたから、そこまで期待は出来ないかもしれないけど、正人が死にかけてまで作った作品だから多少は効いてると思いたい。

そうしないと正人の死が無駄になる。

あ、間違えた。

死にかけてまで作った事が無駄になるだった。


しかしラケッツさんが光属性の魔道具を使ったって事は、もう魔族が出張って来てるって事なんだよな。


随分と早い気がする。

俺の予想としては偉そうに後ろで踏ん反り返ってるかと思ってた。


もしそうなら光属性を付加した武器をエルエス兄さんのスキル投擲で投げまくってもらうつもりだったんだけど。

残念‥


アシュラ君は強いとはいえ、また投入したばかりだからそこまでの活躍は見せていない。


魔族の中にアシュラ君が危険だと認識して早めに手を打った奴がいるって事か‥


面倒だな。

頭を使う魔族がいそうだな。


まあいい。

とはいえ魔族は10人前後だ。


こちらは魔道具を装着している傭兵が50名はいる。

光属性の武器を装備した人を中心に魔族1人に対して5人で当たれば余程の奴がいない限り負けることはないと思う。


とりあえずはこのままアシュラ君部隊に頑張ってもらって魔族が出てくるまで他の人たちは待機してもらうと‥




突然帝国兵の後方に大きな魔力を感じた。


魔力を感じた方を見ると、そこ一帯の空間が歪んでいる。



なんだあれは‥?


歪みの向こうには無数の影が見える。

今までそこには何もなかったはずだぞ?


まさかあの大きな歪みは別の空間と繋がっているのか‥?


歪みが突然消える。


そしてそこには万を超える数のモンスターが出現していた‥







「ハーフェル様。ビアルポ様からの伝達で、変換門の準備ができたそうです。」


「そう。今回の数は?」


「はっ、魔国にて【マニュピレイト】を持つ者がかなりモンスターを集めております。数として一万はいくかと。念のため全てのモンスターを呼び寄せる事ができるように、それ相当の魔石を準備しております。」


「そう。」


(変換門は予め決められた座標の物を交換する事ができる。だけど交換するには、どちらの座標も等しい物がなければならない‥モンスターの場合はモンスターが持っている魔力と同等の魔石が必要。でも今回のモンスター全てを交換するには、魔国が保管している魔石の3分の1が必要‥果たしてそこまでする必要があるのか‥)


ハーフェルは部下に指示を出せずにいた。


(さっきのラーシュと戦ってた奴が勇者じゃないとしたら‥あいつらは私達と戦う術を手に入れたのかもしれない。だけど数はそれほどないと思うし、多分私の結界なら防げるはず‥でも弱い魔族は無理ね‥多分防げるとしたら十魔くらいかしら‥?これ以上被害を出さないためには‥)


「ビアルポに伝えて。今回持ってきた魔石を使って、全部のモンスターを交換しろと。」

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