第647話
トールルズの首都プリカ付近までやってきた。
歩いて数日はかかる距離をジャイアントボア車は1日で走り切った。
さすがのジャイアントボアも疲労しているようだったけど、でもおかげでプリカが陥落する前に着く事ができた。
戦いが終わったら美味しい物でも食べさせてあげないと。
ミミウがキョロキョロしている。
貴方はいつも美味しい物食べてるでしょ。
でもマルコイの時よりも反応が悪いわね‥
やっぱりミミウのお腹の虫はマルコイのご飯に反応するのかしら‥?
ジャイアントボア車はスピードを落とさず、小さくだが首都が肉眼で確認できる距離までやってきた。
首都の周りに黒煙が舞っている。
だがあくまで外側だけだ。
首都の中からは上がっていない。
どうやら間に合ったようだ‥
プリカは獣人国の首都ロッタスとは比べ物にならないくらい高い城壁に囲まれている。
確かにあれなら高ランクモンスターでも易々とは落とす事ができないだろう。
それでもマルコイが獣人国を攻めた時のドラゴンがいればあっという間に陥落しそうな気がする。
だけど見える範囲にはあれほどのドラゴンはいなようだ。
あのサイズになるとそうお目にかかることはないようね。
その時、一頭のドラゴンが宙に舞った。
マルコイドラゴンほどじゃないけど、油断できない大きさだ。
城壁の中も慌ただしくなっている気がする。
放っていたら駄目な気がする。
わたしはすぐにジャイアントボア車の中で魔力を練り上げる。
「ほぇ〜‥火の精霊さんが喜んでるですぅ。」
ミミウが何か言った気がするけど、それどころじゃない。
「『炎の息吹よ!我が敵を穿て!豪炎閃光陣!』」
わたしの目の前に魔法陣が浮かび上がる。
そこから先端が尖った炎の棒が浮かび上がる。
スピードと距離を重視した魔法だ。
ここからでも届くはず。
ドラゴンに当て此方に少しでも注意を向けさせなくちゃ。
わたしの魔法は音を立ててドラゴンに飛翔する。
そして魔法はそのまま宙に浮いているドラゴンに炸裂した。
巻き起こる閃光と爆音。
これでドラゴンが此方に意識を‥‥‥‥
え?
え、えっと‥
わたしの見ている前で、宙に浮いていたドラゴンが真っ黒に焦げ、地上に落ちていった。
明らかに絶命したと思われる姿で‥だ。
あ、あれぇぇ?
わたしの魔法ってこんなに威力あったかしら!?
思わず自分の手を見る。
すると手にはマルコイからもらった指輪がはまっていた。
マルコイが勘違いさせてくれた指輪は2種類ある。
1つは魔法の威力を弱める指輪。
そしてもう1つは通常よりも魔力を消費して魔法の威力を高める指輪だ。
こっちも貰った時に勘違いしそうになったのは内緒だ。
通常魔法は一定の魔力を注ぐと発動する。
魔力制御で威力は変わるが、完璧に制御された魔法は威力が変わらない。
しかしマルコイが言うには、この指輪は発動する前に、一旦魔法を撓ませるらしい。
いまいち意味がわからないのだけど、魔法を発動させるのにそこから更に魔力を消費する必要があり、それによって威力を上げるのだそうだ。
使ったのは初めてだったけど、かなり威力が上がったみたい。
だってマルコイドラゴンほど大きくはないといえ、魔法耐性の高いドラゴンをこんがり焼いちゃったもの。
「アキーエさん!あんなに焼いたら食べるとこが無くなるですぅ!」
「え!あ、ごめんごめん。まさかあんなにこんがりなるとは思わなかったわ。」
「な、な、なんじゃありゃ‥」
ジャイアントボア車から戦場を覗いていたドワーフのボヤンさんが口をあんぐりと開けて、わたしと戦場を交互に見ている。
戦場でも突然起こった爆発で怒声や悲鳴が上がっている。
「爆殺女神が通った道は全て灰燼と化す。やっぱり噂は本当じゃったんじゃ‥」
ボヤンさんが何か物騒な事を言っている‥
ちょっとその噂後で聞かせてもらおうかしら?
あとその噂の出所に関しては、マルコイに話を聞かせてもらう事にしないといけないわね‥
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