第643話

「モンスターの氾濫という事ですか?」


「いや、数的にはそこまで多くはないみたいです。ただ数はいませんが、1匹1匹がかなりの高ランクモンスターのようで‥詳しい話はギルドマスターから話をされるので、冒険者ギルドまでお願いします。すみません、他にも数名高ランク冒険者に声をかけてきます!」


そう言って副ギルドマスターは家から出て行った。


やはりマルコイが危惧していた事が本当におきたようだ‥


「ミミウ、みんなに声かけよう。わたしは正人さんたちに声をかけてくるから、ミミウはアレカンドロたちにお願い。」


「りょーかいですぅ!」


わたしはすぐに正人さんの部屋に行く。

ノックすると中から、あやめさんが返事をした。


「どうぞ〜。」


中に入ると‥‥


少し前からホット商会が出しているケーキが宙を舞っていた。




ケーキはホット商会が出しているホットケーキをデコレーションした物で、卵の白身を泡立てて甘くした物や果物がたくさん乗っている。


とても甘く美味しくて、今じゃケーキを出している店は行列ができている。


わたしも好きでよく食べるんだけど、食べ過ぎると太るよとマルコイに言われたので、3日に1度くらいにセーブしてたりするのよね‥


マルコイは今度本格的にケーキを作ろっかなと言っていた。

どうやら、ホット商会で出しているケーキとは違う物があるらしい。


その言葉を放ったと同時にミミウとキリーエに囲まれた。

多分すぐに商品化すると思うから今から楽しみだ。




その話題のケーキは宙を舞って部屋の主である正人さんの顔に着弾した。


勢いがいいので、鼻の穴だけじゃなくて耳の穴にも入っただろうな‥

洗うのが大変そう‥


被弾した正人さんは盛大に椅子ごと後ろに倒れ込んでいた。


「ああ!すみませんすみません!すぐに拭くものをお持ちします!」


そう言ってベアトリスさんは近くにあったバケツにかけてある雑巾で正人さんの顔を拭きだした。


顔が真っ黒になる正人さん。


「ああ!これ雑巾でした!すみませんすみません。」


今日も平常運転のベアトリスさん。


でも他の人に対しては、ここまで酷くないんだけどな‥


正人さんの時に限って盛大にやらかしている。


今度ベアトリスさんに話を聞いてみよう。

もしかしたらもしかするかも。


「あ〜あ。ごめんなさい、アキーエちゃん。変な所見せて。何か用事だった?」


「うん。用事は用事だったんだけど‥あれ大丈夫なの?」


「大丈夫よ。毎日の光景みたいなものだから。食べ物か飲み物が毎日宙を舞ってるわ。今日は正人の誕生日だったからケーキをベアトリスさんと恵で作ったんだけど‥まあ正人はあれでいいとして、あたし達用のケーキは別にあるから大丈夫よ。」


誕生日にケーキ‥?


わたしが不思議そうな顔をしていると、あやめさんが説明してくれた。


「あたし達のいた世界では、誕生日にケーキとプレゼントを渡してお祝いしていたの。正人が誕生日だったから、せっかくだから誕生祝いしてたのよ。」


そんな催しがあるんだ‥

今度マルコイの誕生日にわたしもやってみようかな。


「ところでアキーエちゃん。用事は‥?」


「あ!そうだった!トールルズで異変が起きているから、冒険者ギルドから招集がかかってるわ。あやめさんたちも冒険者登録してたよね?活動してないから高ランクじゃないかもしれないけど、相手に魔族がいるかもしれないから声をかけておこうと思って。」


「そうなんだ。最近冒険者活動してるけど、まだCランクなのよね。でも魔族は倒すってマルコイと約束したし、美味しいご飯の分は働かないとね!ほら!正人、みんな行くわよ!」


「うぇ〜い。」


正人さんがクリーム塗れで手をあげている。


「わかりました。マルコイさんの期待に応えないといけませんね。」


恵さんも気合を入れている。


恵さんはまだ大丈夫だとは思うけど、今回の戦いで気持ちが本物かわかるわね。

そうなった時はきちんとお話しないといけないかもしれない。


「それじゃあ10分後に玄関に!もしかしたらそのまま出発するかもしれないので戦える準備をしてください。」


さて、マルコイがいないんだ。

わたしが頑張らないと!

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