第644話
「アキーエちゃん。あやめちゃんたちはどうする言うてた?」
キリーエはミミウに聞いて、わたしより先に玄関に出てきてた。
「参加してくれるみたい。魔族もいるみたいだから、正直助かるわ。」
「そやね。でもよかったわ、マルコイさんにスキル譲渡してもらってて。予めポーションなんかスキルに入れとけばこんな時も慌てなくてええからね。」
キリーエは少し前にマルコイに【ボックス】というスキルを譲渡されていた。
マルコイ程じゃないけど、かなりの量を入れる事ができるみたいで、キリーエが譲渡された時に「こ、これは商人にとっての夢のスキルやー!」って言って狂喜乱舞してた。
少し大丈夫かなと心配する程の喜びようだった。
わたしも欲しかったけど、わたしが貰っても本やカーロッタで買ったマルコイの肖像画を入れるくらいだから勿体ないから仕方ない。
でもできればわたしが書いてるマルコイの活躍の記録は入れておきたかったな。
無くすといけないから、
ずっと持ってないといけないし、誰かに見られても嫌だし‥
でも子供ができたら教えてやりたいんだ。
貴方のお父さんはこんなにすごい人なんだよって。
そのためにもマルコイがこんな事をしたんだって記録に残していかないと。
い、いや、別にマルコイの子供を産むって決まってるわけじゃないんだけど、一応ね一応。
アレカンドロもリルも準備ができたみたいで玄関に
やってきた。
「むほー!日頃の訓練の成果を発揮する時がきましたな!高ランクのモンスターですか、腕がなります!」
「魔族‥きる‥」
2人とも張り切ってるな。
マルコイがいないけど、不安じゃないのかな?
「あとは正人さんたちだけですぅ。アキーエさん頑張るですよ!」
「そうね‥でもミミウは不安じゃない?マルコイいないんだよ。」
思わずミミウに小声で聞いてしまった。
ミミウも不安に思ってるに違いないのに、わたしの気持ちを言ってしまった。
「マルコイさんいないけど、アキーエさんがいるからみんな心配してないですよ。」
え?
ミミウの目を見る。
どうやらミミウの言葉は本心みたいだ。
わたしがいるから心配ない?
そうなんだろうか‥?
ミミウの言葉を聞いていたのか、キリーエもアレカンドロもリルも頷いている。
「マルコイさんがいるからアキーエちゃんはドラゴン倒したん?違うよね。アキーエちゃんの実力やん。それにアキーエちゃんはいつもうちらを引っ張ってくれてるんよ。自信持ってな。」
「そうです!自分はアキーエ殿なら安心して背中を任せられます!魔族やモンスターなど取るに足りませんな!」
「リル、アキーエの剣になる。まかせろ。」
みんな‥
「ごめん、待たせた?こっちも準備オッケーよ!」
あやめさんたちがやってきた。
よし!
マルコイがいなくても、みんなと一緒なら魔族が相手でも怖くないわ。
「よし、みんなギルドに行きましょう!」
アキーエたちはギルドに向かい歩き出した。
「不安になるもなんも‥うちは魔族の方が可愛そうやと思うんやけどね‥」
そんなキリーエの言葉は前を向いて歩き出したアキーエの耳には入らなかった‥
獣人国の首都、ロッタスの冒険者ギルドに到着した。
いつもと変わらない様子で冒険者たちが出入りしている。
しかしいつもより表情が固いように見える。
トールルズの件を聞いたのだろうか‥
ギルドの大きな扉を開けて中に入る。
いつも受付にいるイザベラさんの姿が見えない。
「アキーエさんですね。お待ちしておりました。応接室にてギルマスがお待ちです。こちらへどうぞ。」
ギルドの職員さんの案内でギルドの応接室に向かう。
「アキーエさん到着されました。」
扉をノックしてから職員さんが中に声をかける。
「アキーエちゃん?待ってたわぁ!中に入ってぇ。」
中に入るとイザベラさん以外に冒険者の人たちがいた。
初めて見る顔もあれば、見知った顔もある。
「さて、アキーエちゃんが来たから、内容を説明するわよ。」
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