第642話

マルコイが戦場に行ってしまった。


今回の戦いはマルコイが率いる傭兵団のみんなが帝国軍と魔族を迎え撃つ作戦だ。


わたしもついて行きたかったけど、トールルズ周辺の動きも気になるので戦力を二つに分けるためにマルコイ以外のメンバーは獣人国に残る事にした。


マルコイは強いから大丈夫と思っている。

対魔族用の魔道具もたくさん作っていたので問題はないと思う。


それでも何かあった時に自分が側にいれない、一緒に戦えないと思うとやきもきする。


「アキーエちゃん。マルコイさんなら大丈夫やって。心配せんでもケロッと終わったぞって帰ってくるよ。」


「うん、そうだねキリーエ。わかってるんだけどさ‥魔族と戦う時に側にいないのも、いれないのも不安で。」


「アキーエ殿、マルコイ殿は最強なので大丈夫です!それよりトールルズで何かあった時のために身体を動かしておきましょう!」


はぁ‥

アレカンドロはマルコイの事が好きなはずなんだけど‥


少し前に話を聞いた時は、初めての感情だからどうしていいかわからなくて、とりあえず身体を動かしてるって言ってた。


動いてたらあまり気にならなくていいらしい。


とりあえずそれじゃ駄目なんだけど、もう少し落ち着いてから話し合おうと思う。

だって詳しく聞いたら涙目になっちゃったから。



でも確かにアレカンドロの言う通り、マルコイはわたしたちを信頼して神聖国に行ってるんだから、気を抜いたらダメよね。


アレカンドロとリルみたいに全力で運動する気はないんだけど、少しは身体でも動かしておこうかしら‥


そんな事を考えていると玄関を叩く音がした。

どうやら叩き方から少し焦っているようだ。


玄関に向かい扉を開ける。


「よかったアキーエさん!申し訳ありませんが、冒険者ギルドまで来ていただいてよろしいでしょうか?もちろん他のパーティメンバーの方もいらっしゃれば一緒に来ていただくと助かります。」


この人誰だっけ‥?


見た事ある気がするけど、はっきり覚えていない‥


「あ、私冒険者ギルドの副ギルドマスターになります。いつもグレイソンがお世話になっています。」


あ、そうか!

どこかで見た事があると思ったら、獣人国がオーガの群れに襲われた時に冒険者をまとめていた人だ。


でもグレイソン?


「すみません。直接お会いした事がなかったもので。でもグレイソンさんとは‥?冒険者ギルドにそんな人いましたっけ?」


「あ、皆さんにはイザベラと言った方が通じるかもしれません。」


あ!


そういえばイザベラさんってグレイソンって名前だった気がする。


イザベラさんとしか呼んでなかったから、すっかり忘れてたわ‥


「わかりました。すぐに皆んなに伝えてギルドに行きますけど、何かあったんですか?」


「はい。獣王様から通達がありトールルズの周辺を見張っていました。その者からの連絡で、トールルズにモンスターが迫っていると。」


「数はどれくらいですか?」


「数はそれほど多くないのですが、大型のモンスターばかりで中にはドラゴンの姿もあったようです。それに人型の姿もあったようなので、もしかしたら魔族もいるかもしれません。」


ドラゴンか‥

前回は他のモンスターがいなかったから倒せたけど、ドラゴンと戦いながらモンスターを相手するのは厳しいわね‥


「ドラゴンですか!?」


話を聞いていたのか、ミミウが目をキラキラさせながら話に入ってきた。


「はい。ドラゴンとなると、Aランク以上の冒険者であたらないと難しいかと。」


「何ドラゴンですか?」


「え?そ、そうですね‥数匹確認されています。飛行型もいましたし、地上を移動しているタイプもいたようです。」


「アースドラゴンさんですかね!?やったですぅ!」


「え?や、やった?」


ごめんなさい‥

ミミウはドラゴンが出たから警戒して聞いたわけじゃなくて、ドラゴン肉が食べれると思って聞いたんです。


わたしはミミウの首にそっとスカーフをあてた。

よだれで服が汚れないように‥

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