第634話
グルンデルさんがいる神殿に到着した。
入り口でどこかで嗅いだような匂いがしたが、気にせずにイルケルさんと話をして中に入れてもらった。
グルンデルさんがいる部屋に向かう。
入り口でした匂いがだんだんと強くなってきた。
まさかな‥
グルンデルさんの部屋の前に着くと中で人の話し声が聞こえた。
宣戦布告を受けて、主要な人たちと話をしているのだろうか‥?
扉をノックする。
「イコルです。入ってもよろしいでしょうか?」
「おお!イコル君!どうぞ入ってください。」
扉を開けて中に入る。
グルンデルさんと数名の男性がいた。
その中には改宗した諜報員の人もいる。
その中で俺が入ってきた事も気にせず、一心不乱にテーブルで何かを食べ続ける人がいた。
「お久しぶりです聖王様。」
「お久しぶりですイコル君。でもそんなにかしこまらないで下さい。救国の英雄に聖王様なんて言われるとこそばゆいですよ。いつものようにグルンデルでお願いします。」
「しかし‥」
俺は他の人たちを見る。
「ああ、彼らなら大丈夫です。私が聖王になる前から一緒にいる者達ですから。イコル君の事も私が話してますからね。」
そんな会話をしている間もテーブルで何かを食べている男‥
よく見れば見覚えのある格好をしている。
頭部の鎧は外しているが、豪華だが実用性がありそうな全身鎧‥
あれ?
この人帝国から宣戦布告しに来た人じゃない?
あれから少し時間も経ってるし、帝国に戻ったと思ってたんだけど‥
「うまんまっ!」
帝国の人は何かを掻き込んで食べている。
なるほど、匂いの元はこれだったか‥
たっぷりとタルタルソースのかかった丼物を食べている‥
もしかしてあれか?
タルタルによって改宗したってやつか‥?
それにしても‥
何故この人は涙を流しながらタルタル丼を食べているのだろうか‥
「あの‥グルンデルさん‥この人は‥」
「ああ、この方は帝国から使者として神聖国に来られたバリネルさんです。もうすっかり改宗されてタルタル経の信者となられましたけどね。」
やっぱり改宗してるのか‥
「グルンデルさん‥どうやって改宗されたんですか‥?」
「‥‥‥‥‥それは神のみぞ知る事になります‥」
絶対誤魔化した‥
魔族の思考誘導や洗脳なんかより、よっぽど凶悪な気がするんですけど‥
食べてる顔は幸せそうなんで、別にいいのかなと思わなくはないけど。
「それでグルンデルさん。帝国の宣戦布告に対してはどうされるんですか?」
「そうですね‥いろいろと手は尽くしたのですが、争いになってしまいました。私はこの国が神の御力で守っていただけると思っていますが、それは私達が努力した結果であると思います。ただ御力で守ってもらうのではなく、戦う自分達に御加護があると思っております。それならばただ神に縋るのではなく、帝国に抗おうと、戦おうと思っています。」
「そうですか‥わかりました。私も仲間に助力してもらうよう頼んでいます。帝国と戦う時はきっと力になってくれると思います。」
「おお。ありがたい。しかし今回の戦いですが、おそらく神聖国は追い詰められてしまうでしょう。だからその方達の助力はお断りさせてもらうようお願いします。」
「何故ですか?」
「バリネルさんから伺ったのですが、今回帝国には魔族がいるようです。それも10名以上‥魔族1人で100人、いや1,000人分の力があると言います。それが10名以上いるのであれば敵う術がありません。我らは神の御加護を信じているので構いませんが、助力していただく方には申し訳ない。」
そうか‥
もう魔族だって事を隠してないんだな。
しかしそれなら国が大騒ぎになるはずだが‥
もしかして思考誘導でもしているのだろうか?
「大丈夫です。相手が魔族であっても、私の味方は負けませんから。」
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