第632話

帝国とその背後にいる魔王との戦いに向け、準備を始めてから一月が経った。


元帝国の諜報員の人が予想した一月が過ぎようとしていた。


時間がまだあるのであれば魔道具を更に量産しようとも思ったが、なかなか帝国の人は時間厳守のようだ。


期日が迫ったので念のために神聖国に転移で移動した時に、その時は来た。



街は戦争前とはとても思えないような賑やかな様子だった。


ホット商会は相変わらずこの街の発展に力を入れているようで、街の至る所にホット商会のマークが付いている看板が出ている。


そんな賑やかな街の入り口に1人の男が現れた。


その男は豪華でそれでいて実用的な全身鎧を装着していた。


門番を振り切り、中に入ってきた男は街の入り口で大きな声を上げる。


「我は帝国からの使者である!ここ神聖国は長年凶行を行ってきた!そして今度は同盟という名目で他国を欺き搾取しようとしている!そんな悪辣非道を続ける神聖国に対して帝国は‥‥‥」



神聖国の国民が帝国兵の一挙一動を見つめている‥

まるでその後の言葉が自分たちの平和な時間を破壊するのを知っているかのように‥




「宣戦布告する!」




帝国兵は黙って自分を見ている人達を見つめ満足そうに頷く。


「我は今より神聖国の王に宣戦布告を伝えてくる!お前達は今より国を出るがいい。我が国は神聖国を、宗教を捨てて逃げるのでは追わぬ。しかしこの国に留まるのであれば、女子供とて容赦はせぬ!皆殺しになると思え!」


そして帝国兵は聖王のいる神殿へと進んでいった。



俺はそれを見送った後、すぐに『アウローラ』の拠点に転移で移動する。


入り口にいたラケッツさんは俺の表情を見て察したのか、何も言わずに中に通してくれた。


俺は団長室をノックして中に入る。


「どうぞ。」


中に入るとクワイスが書類を睨みながら作業をしていた。


「どうした‥ってマルコイさんか。‥‥その顔を見ると、ついに帝国が動き出したって所か?」


「ああ、その通りだ。さっき神聖国に使者が来て、宣戦布告したよ。予測していた一月丁度で動いてきた。念のために俺は聖王の意志をもう一度確認してくる。だからクワイスたちは遠征の準備をしていてくれ。エルエス兄さんには俺から伝えてくる。」


「わかった。」


クワイスはメンセンに指示を出して準備を始める。


俺はエルエス兄さんの元に行き、同じ内容をエルエス兄さんとスネタさんに伝える。


「本当に神聖国に戦争をしかけたのか‥魔王に唆されたのか、それとも元々侵略したいとでも思っていたのか‥どちらにしろ迷惑な話だな。」


「ああ。だから帝国と魔王には思い知ってもらうつもりだよ。」


「そうだな。」


こちらはタルタルの魔力で改宗した人のおかげでしっかりと準備する事ができた。

本来は一月という期間は短いのかもしれないけど、新たなスキルのおかけで、魔力量が増加してキリーエ特製のしばらく寝なくても大丈夫的な謎のポーションのおかげでフル活動で魔道具を作れた俺からすると、全然間に合う期間だったぜ。


ただ二日間くらい身体が動かなかったから、その時動かれてたらやばかったけど‥


トールルズの動きが心配だから、仲間は獣人国で待機のままだ。

まあ転移で移動できるのが俺1人だからしょうがないのだが。


卓は開発した魔道具が使用されているのを直接見る事ができないと、血の涙を流していたけと‥


帝国兵については基本神聖国であたってもう。

これは国同士の戦いだ。

俺たちの相手は魔族だからな。


でも帝国には多少頭に来ているので、戦いの途中にアシュラ君を装着したラケッツさんを送り込む予定にしている。


武器は装着させないが、盾を装着させる。


殺しはしないが少し痛い目にはあってもらわないとな。


ラケッツさんにその話をしたら、また遺書を書くと言っていたのでメンセンつけると言ったら納得した。


どんまいメンセン。


さて俺も準備をしますかね。

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